今回は、IT業界で現在注目されつつあるPdM(プロダクトマネージャー)について解説していきます。
製品開発の責任者となるPdMは、ここ数年で名称がついた職種であることから、業務内容や将来性が不明確な部分が多くあり、未経験から転職を目指せるのかどうか疑問を持つ人も少なくはありません。
ここでは、PdMの転職を目指す方に、基本的な情報から転職のポイントをご紹介していきましょう。
PdMとは何をする仕事?
PdM(プロダクトマネジャー)とは、企業の製品・サービスといったプロダクトの開発・販売の全体指揮を取る責任者です。
プロダクトは直訳すると「商品、製品、生産物」といった意味となり、PdMが開発する製品内容は企業により異なります。
IT業界の場合だと、その多くはIT機器やサービス・ソフトウエア・アプリケーションなどにあたります。
PdMはここ数年で名称がついた職種であるため、浸透している企業が少ない傾向ですが、そもそもなぜ注目を集めているのかをまずは解説していきましょう。
PdMが注目される理由は?
PdMが注目されつつある一番の理由は、IT製品の需要増加が影響していると考えられます。
もともと、製品開発における舵取りはPM(プロジェクトマネージャー)が全て行う傾向にありました。
しかし近年は企業のDX推進が進んだことから、IT製品の需要が増え製品開発する企業が激増し、企業同士で品質争いが行われているのが現状です。
そのため、より高品質な製品開発を行うべく、プロジェクト管理・製品管理・マーケティングなどの各業務を分担する必要が発生し、製品開発特化のPdMが誕生したという流れです。
また、開発手順もウォーターフォールからアジャイル開発が主流となり、ユーザーニーズをより的確に捉える必要が求められた点も、PdMが求められる要因のひとつと考えられるでしょう。
プロジェクトの進行手法。上から下へ手順通り行うウォーターフォール(直訳すると「滝」)に対し、開発時の進行具合や発生した物事に対し臨機応変な開発をおこなっていくのがアジャイル開発となる。
PdMの将来性は?
IT市場規模拡大の影響により、PdMの将来性は非常に高いと考えられます。
実際の数字で見ていくと、IT企業の市場調査とコンサルティングを行うグローバル企業である「IDC Japan」の予想では、2021年~2026年のIT市場規模の年間平均成長率は2.8%で推移すると予測されています。(引用「マイナビニュース」)
そして、2021年のIT市場の成長率は前年比3.4%増と予測を上回る形となりました。(引用「IDC Japan株式会社」)
IT市場規模は今後も拡大を続け、製品開発に取り組む企業も並行して増加することから、企業の品質争いも激化していくでしょう。
これらの理由から、製品の品質維持に不可欠なPdMの需要は今後も高くな利続けることが見受けられます。
PdMとPM・PMM・POとの違いは?
PdMとよく混同されやすい職種は、PM・PMM・POなどがあります。
- PM:プロジェクトマネージャー
- PMM:プロジェクトマーケティングマネージャー
- PO:プロダクトオーナー
全体統括を行うPMはどのプロジェクトにも必要となる職種であり、PMM・POは企業とプロジェクトの規模によってPMやPdMが兼任する場合があります。
これらの職種の求人では、それぞれの名称で募集されてはいるものの、業務が兼業になっていることもあるので、転職の際には注意が必要です。
各職種の業務内容を理解し、転職後の食い違いが発生しないようリスクヘッジしておきましょう。
では次で詳細を解説していきます。
PM
PM(プロジェクトマネージャー)とPdMは、どちらもプロジェクトの取りまとめを行います。
間違われやすい職種ですが、取りまとめる対象がプロジェクト(計画)かプロダクト(製品)なのかで区別をつけましょう。
同じ製品を作る案件で計画全体の進行や管理を行うのがPMであり、製品そのものの質を上げるため活躍するのがPdMとなります。
PdMは認知が浅い職種であるのに対し、プロジェクト単位で必ず必要となるPMは、企業でも必要不可欠な職種として募集が多い傾向です。
PdMとして転職を目指すのであれば、プロジェクト内でPMがPdMの業務も全て兼業しているケースがああることもめずらしくありません。
製品開発専業ではありませんが、PMの求人に応募してPdMの業務を行うことも可能です。
PMM
PMM(プロジェクトマーケティングマネージャー)は、その名の通り、プロジェクトにおけるマーケティング部門を統括する職種です。「製品をどのように売るか戦略を立てる」のが主たる業務となります。
PMMはPdMと同様に近年注目されている職種であり、PdMが製品そのもも満足度や品質向上を上げるのに対し、PMMは費用対効果や販売意欲を向上させる役割を果たします。
PO
PO(プロダクトオーナー)は、商品やサービスといったプロダクトそのものに責任を持っています。
具体的には、開発の方向性が決まったプロダクトにどのような機能を備えるべきか、何を実装するのかを管理することが仕事です。
PM・PdMが上流で企画策定したプロダクトに対し、肉付けをしていくようなイメージとなります。PdMの直下として活躍し、デザイナーやプログラマーを指揮する立ち位置です。
PdMの仕事内容は?
冒頭でも解説したように、PdMの仕事は「製品開発における全体の指揮をとること」で、具体的には次のような仕事を行います。
- 製品の企画、立案、提案
- 製品のマーケティング戦略
- スタッフを配置・連携
- リリース後の効果検証
まずはどんな製品を作るか提案段階まで企画し、製品の方向性が確定すれば実行に移します。
製品のマーケティング対象を決める市場調査やロードマップの作成を行うことも業務に含まれる場合が多く、マーケターとしての知見も必要とされる職種です。
マーケティング業務に関しては、PMMがいる場合は一緒に行うこともありますが、よほど大きなプロジェクトでない限りPdMが兼任している場合がほとんどです。
その他にも、製品開発におけるエンジニアやスタッフの選出や進捗管理も行います。
もちろん、一つの製品だけでなく、複数の製品開発を行っていくので同時進行でさまざまな業務を遂行しなくてはいけません。
PdMに必要なスキルは?
PdMになるのはどのようなスキルが必要であるかも確認しておきましょう。
マネジメントスキル
PdMに必要とされる「マネジメントスキル」とは次のようなものになります。
- 計画進行能力(時間管理・逆算・指示)
- 課題解決力
- コミュニケーション能力
- 指導能力
多方面へのスキルが求められるPdMの中でも、計画進行能力は特に重要であるとされています。
多職種が関わるプロダクト開発で、各々がスムーズに進行できるよう先回りしたマネジメントを行わなければ計画が滞ってしまうからです。
また、突発的にトラブルが起きることもめずらしくなく、臨機応変な対応ができる能力も求められるでしょう。
PdMになるには、ある程度の経験則を持っていて、適切な判断ができることがポイントとなるでしょう。
マーケティングスキル
製品開発では、売れる製品を作るためにも市場調査が必須です。そのためPdMには「実用的な」マーケティングの知見が求められます。
ただマーケティングの流れや言葉を理解するだけでなく、製品開発の責任者として、実際にマーケター部門と専門的な用語を使いながら意見交換できるレベルが求められます。
マーケティングは手法やトレンドがの入れ替わりが早い業界であるため、率先して知識をインプットできる向上心も同時に必要とされるでしょう。
プロダクト開発スキル
PdMはプロダクト開発の上流から関わる責任者であるため、開発の上流〜下流までの全肯定の流れ・必要な職種・技術・所要時間を把握しておくことが必須です。
プロジェクトの計画を立てる役割であるため、俯瞰した全体像を掴むことができなければ、プロジェクトに遅延やトラブルが発生する可能性もあります。
PdMはエンジニアやデザイナーからキャリアアップするケースもありますが、企業の募集条件では「開発経験は不要」とされている場合もあるため、コンサルティングやIT製品の知見だけでも転職は可能です。
しかし技術な部分も理解しておくことで、開発メンバーとより深い意見交換をすることができ、それが信用力にもつながります。
できるPdMを目指すのであれば表面的な情報に加え、深掘りした技術面の開発スキルも取得しておきましょう。
デザインスキル
高品質・高評価を得る製品を開発するためには、PdMがUI/UXデザインの観点から意見できなくてはいけません。
いくらマーケティングを綿密に行っても、機能性が損なわれていればユーザー満足度は低くなります。
PdMはデザインを考えるセンスは必要ありませんが、ユーザーにとって良いUXかどうか判断できる知見を持っていることが求められるでしょう。
PdMは未経験でも転職できる?転職の方法を解説
最後は、PdMの転職でよくある「未経験でも転職できる?」といった疑問を解説していきます。
結論:未経験からの転職は難しい
PdMはプロジェクト全体の舵取りを行う役割であることから、高度なスキルが求められます。そのため未経験での転職は狭き門となります。
開発、マーケティング、デザイン、マネジメントなどのスキルと知識を網羅していて、経験則で判断できる実行力がある人物がPdMとしての役割を果たすことができます。
そのため、未経験の場合は必要な知識・スキルをつけるために、まずはエンジニア・デザイナー・企画職などの下積みから初めることをおすすめします。
大企業であれば未経験枠の募集もまれにある
下請け企業ではなくクライアントから直接案件受注しているような大手企業であれば、プロジェクトも大規模で人員も多数募集しているケースがあります。
その場合、PdMも複数名雇用することが考えられるので未経験枠でも募集している求人もあるでしょう。
しかし大企業への転職自体の難易度が高い・応募人数が多いことから、難易度はさらに高くなることが予想されます。
「未経験採用」といっても、コンサルティングやITソリューション営業など、関連した経験者が優遇される可能性も低くはありません。
未経験から転職するには製品開発の経験を地道に積んでいくことが大事
製品開発と一言にいっても、IT製品はいろんなものがあり、それぞれの製品で開発フェーズや特性があります。
未経験者から優れたPdMになるには、できるだけ多くの製品開発に携わり知識量を増やすことが転職成功の近道であると言えるでしょう。
同時並行でマーケティングやマネジメントなどの知識やスキルも学んでいく必要があるので、転職には努力や労力が必要であることは否めませんが、将来性の高くやりがいの感じられる職業です。
PdMの募集をしている企業一覧
現在、PdMの募集がある企業は下記となります。
- 株式会社Third
- 博報堂テクノロジーズ
- 株式会社SUPER STUDIO
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