前回の記事では、日本国内におけるデジタルマーケティング業界の歴史について振り返っていきましたが、Vol.2となる今回は、現在のデジタルマーケティング業界についてまとめていきたいと思います。
前回は歴史を紐解きながら、
[su_list icon=”icon: check” icon_color=”#f46f19″]- インターネットの普及と同時に急速に市場が拡大
- スマホ・SNSの普及に伴い様々な一層の市場拡大、様々な広告商品が登場
- SEOにおいては、ユーザーの検索体験向上に向けてGoogleがアップデートを繰り返している
- 便利なアドテクノロジーに潜む問題が顕在化[/su_list]
等の状況を理解できました。
2018年現在、デジタルマーケティング業界はどのような動きを見せているのでしょうか。
2018年現在のデジタルマーケティング業界の動向
キーワードは下記の通りです。
それぞれまとめていきます。
01:Cookieをめぐる問題
2017年から現在にかけては、デジタルマーケティング業界において様々なCookieをめぐる問題が議論されています。
アドテクノロジーの登場以降、ユーザーターゲティングや広告効果測定の方法としてメジャーであったCookieを用いたクロスデバイストラッキングですが、世界各国で個人のプライバシーに関する議論が活性化すると同時に、デジタルマーケティング業界に対しても懸念の熱が高まっており、様々な議論が巻き起こっています。具体的に発生している事象としては、
・モバイルブラウザ市場第二位のsafariを提供するAppleが「Intelligent Tracking Prevention(ITP) 2.0」の搭載を開始
・EC諸国によるGDPR(EU一般データ保護規則)の施行
詳細については、
ITPの概要とその影響について※2018年9月19日更新
ついに施行、GDPRとは?その影響とは?
これらの記事で解説していますが、今後一層、Cookieを用いたクロスサイトトラッキングは困難になっていく事が想定されています。日本においては、GDPRはあくまでEU諸国内を対象とするため、さほど大きな問題を巻き起こしているわけではありません。しかし、どちらにせよ今後クッキーベースのトラッキングが困難になることが想定されるため、アドテクノロジーベンダーは各社拡張性の高い消費者ID等を用いたトラッキング方法への移行など対応を進めています。しかし、先行きが不透明且つ、技術的ハードルが高く、移行が大きく進展しているわけではありません。現状事業が動かなくなってしまう程の深刻な事態に直面していることもないため、緊急度はさほど高くありませんが、業界全体で危機感を感じていることに間違いありません。
02:動画を代表とするブランド領域の伸長
デジタルマーケティング市場を長きにわたって牽引している検索連動型広告をはじめとして、インターネットを活用した広告出稿は、消費者に購入や問合せなど具体的なアクションを促す目的のダイレクトマーケティングが主流でした。
しかし、スマートフォンの普及や通信環境の向上等により、動画市場が拡大し、ともない動画を活用した認知目的のブランドマーケティングにおいてインターネットを活用する事例が急増しています。
特に、グローバルに事業を展開している日用消費財メーカーや化粧品メーカーなどのナショナルクライアントにおいてはその動向が顕著で、日本の各社ネット広告代理店も、大手ナショナルクライアントの開拓に力を入れています。
今後一層の通信環境向上が想定されている為、引き続き動画市場は成長が見込まれています。ブランド領域においては、動画のみならず、オウンドメディアも注目を集めています。
ネット広告と比較するとオウンドメディアを活用した集客は速効性に欠けるうえに、工数がかかってしまい早期の立ち上がりが難しいため、取り組む企業も多くはありませんでした。
しかし、広告を活用した新規顧客の獲得単価高騰に伴い、新たな顧客獲得の手段として注目を集めています。
オウンドメディアは、良質なコンテンツを提供する事で、顧客のエンゲージメントを高めるとともに、集客コストがかかりません。
動画と併せて、注目を集めている領域です。
03:個人の台頭
SNSの発達に伴う個人の台頭が叫ばれて既に数年経過していますが、引き続き個人を活用した消費者とのコミュニケーションに対する需要は高まり続けています。
これに関して、インスタグラムやyoutubeの影響が大きいことが言うまでもありません。
近年では、従来の広範囲に影響力を持つインフルエンサーのみならず、マイクロインフルエンサー(特有のコミュニティに対し強い影響力を持つインフルエンサー)も影響力を強めています。
また、消費者の購買環境・モチベーションの変化に伴い、インフルエンサーを活用したインフルエンサーコマースも注目を集めています。
個人のストーリーテリングに対する共感を重視する消費者の購買モチベーションの変化は、インフルエンサーコマースの登場のみならず、様々なコミュニケーション戦略を生み出すきっかけとなっています。
例えばUGCもそれに該当します。UGCとは、User Generated Contentsの略語で、言葉の通りユーザーによって生成されたコンテンツの事を指します。
UGCを利用したキャンペーンなどで高い効果が確認できた事例もあり、一個人の生の意見や感想を基に購買行動を促すUGCは、引き続き注目を集めています。
04:変化するメディア
メディアの在り方そのものも大きく変化を続けています。筆頭はサイバーエージェント社が運営するAbemaTVですが、在京民放キー局5局が共同で立ち上げたTVerなど、モバイルデバイスで視聴する動画メディアがテレビに代替するメディアとしてユーザー数を増やし続けています。
ソーシャルメディアやバイラル型の動画メディアも引き続き各社が注力しているところですが、それ以外にも、新たに注目を集めているのが「音声」です。
スマートスピーカーの普及に伴い、ラジオ視聴のポッドキャストが再び注目を集めています。
また、音声放送のプラットフォームサービスである「Voicy」はユーザー数を大きく伸長させています。
このように、デバイスの進化に伴いメディアも変化を続けており、今後一層マスメディアの弱体化が想定されています。
05:オムニチャネル
かれこれ重要性が唱えられ始めてから4,5年たちますが、小売業界を筆頭に、オムニチャネル戦略も引き続き重要なキーワードです。オンラインとオフライン問わず、複数にまたがるマーケティングチャネルを組み合わせ、あらゆるチャネルから同じように商品を購入できる環境を実現することを「オムニチャネル」と呼びますが、あらゆる企業が消費者と様々な接点を創出可能なデジタル時代において、顧客のロイヤリティを高め、優良顧客を長期にわたって囲い込むことが重要になっています。直近ではZOZOとLINE、ユニクロとアクセンチュアなどがオムニチャネル戦略協業を発表するなど、各社の連携事例が目立つように思います。オンラインコマースとオフラインコマースの境界があいまいになりつつある今、どこまでフルファネルで消費者にとって利便性の高い接点を提供できるかが今後の小売業界の明暗を分けることになるでしょう。
勢力を伸ばし続けるAmazonやZOZOTOWNなどの巨大プラットフォーマーの波に飲み込まれない為にも、独自のファン形成が重要です。
06:パーソナライズの高度化
マスメディアの影響力が低下し、デジタルを中心に顧客接点が複雑化する現状において重要になってくるのは、個々人に最適化されたマーケティング施策です。そしてそれを実現するために、ビッグデータの活用、DMPやCDP、MA等を活用した高度なパーソナライズマーケティングの実行が重要になっています。加えて2018年現在においては、高度な技術を活用し、CRMにとどまらないパーソナライズマーケティングを実行する企業も出てきています。ZOZOTOWNのZOZOスーツは分かりやすい例です。ECの弱点であった「試着できない」を解決するのみならず、採寸結果に基づきオーダーメイドのスーツをオーダーできる仕組みは革命的でした。今後一層、AIやIoT技術を活用した高度化されたパーソナライズコミュニケ―ションは重要になっていくでしょう。
07:スマートデバイスの普及
AmazonやGoogle、LINE、各社がスマートスピーカーの開発・販売を積極展開しています。それ以外にも、スマート照明やスマート家電など、「スマートデバイス」の普及が進んでいます。スマートスピーカーの普及は、04:変化するメディアにも挙げた「音声メディア」の普及と同義です。ちなみに、Amazonが販売するスマートスピーカー「Amazon Echo」のSkills(拡張機能)は1万を超えており、様々な企業がSkillsの開発に励んでいます。
最終章の3編でまとめますが、このスマートデバイスの普及は、今後のデジタルマーケテイング業界に大きな変化を生むことになるでしょう。
ここまでをまとめると…
ここまでをまとめていくと、
[su_list icon=”icon: check” icon_color=”#f46f19″]- デジタルマーケティングにおけるプライバシー問題は今後も引き続き議論を生む
- 個人のストーリーテリングに対する共感は消費行動に変化を生みつつある
- パーソナライズされたマーケティング・サービスが進んでおり、今後も増加していく
- メディアは変化を続けている[/su_list]
となります。
あくまでキーワードとして抽出したため分類しましたが、オムニチャネルとパーソナライズ、スマートデバイスとメディアの変化は同系列で語るべき議題です。
次回最終編では、歴史と現在を踏まえて、今後デジタルマーケティング業界にどのような変化が起きるのか、将来性は如何なるものなのか、についてまとめたいと思います。
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