漫画村とネット広告の関連性、今後について考えてみた

皆さんは『漫画村』をご存知ですか?一度は使ったことがあるという方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの漫画を不正に公開した海賊版サイトです。あらゆる漫画を無料で見ることができます。使ったことがなかった方も、政府が対策に乗り出したニュースなどを見て、存在を知った方は多いのではないでしょうか。

「漫画村」は、違法サイトです。許可なく漫画や雑誌の画像をネットに公開しているわけですから、著作権に違反しています。しかし、実は事態はもっと深刻で、著作権周りの問題だけで済む話ではありません。インターネット広告業界とは切っても切れない大きな問題が潜んでいます。
今回は、漫画村問題を元にインターネット広告業界のあり方と今後についてまとめました。

『漫画村』問題について

まず漫画村問題について、事実を整理します。漫画村をきっかけにその他海賊版サイトへも問題提起する風潮が強まり、大きな議論を呼びました。本項目においては、漫画村をはじめとする海賊版サイト全体に対する動きをまとめました。

時系列で整理する漫画村問題

時系列で整理します。
漫画村が誕生したのは、2016年のこと。その後アクセスが増え、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)によると、2017年9月~2018年2月の半年間のアクセス件数は6億1989万であったとのことで、これは同時期の「価格.com」へのアクセス数より多くなっています。
参照): ITmediaNEWS「「漫画村、刑事告訴している」 講談社が明らかに これまで採った対策は

2月9日 衆議院予算委員会で、漫画村の著作権法違反について質疑

日本維新の会の丸山穂高議員が、衆議院予算委員会で著作権法の運用について、漫画村の名前を挙げて、海賊版サイトやリーチサイト(まとめ)への政府としての規制を厳格化しなければ、日本のコンテンツ産業が危機にさらされ続けると訴えています。(この時点で何百億という損失が出ているという話が出ています。)

参照): BN政治ニュース「維新・丸山穂高議員が「漫画村」挙げて著作権法違反と非親告罪化について予算委員会で質疑

2月13日 日本漫画家協会、海賊版サイトについての見解を発表

世の中に増える海賊版サイトに対して事態を重く見た日本漫画家協会は、見解を発表し、これがメディアに取り上げられ、漫画村が世に知れ渡りました。

【見解の一部抜粋】

作り手と、作品を利用するみなさんが、きちんとした「輪」のなかでつながっていることが大事です。残念ながら最近、私たち作り手がその「輪」の外に追いやられてしまうことが増えています。 その代わりに、全く創作の努力に加わっていない海賊版サイトなどが、利益をむさぼっている現実があります。

参照): 公益社団法人 日本漫画家協会「海賊版サイトについての見解

3月5日 有料版「漫画村プロ」リリース

ニュースなどで取り上げられるようになった中、漫画村の運営側はその有料版となる『漫画村プロ』をリリースしました。画像データのダウンロードが可能になったわけですが、クレジットカード情報が抜き取られる可能性もある危ないサイトでした。

4月6日 政府がサイトブロッキングを要請

この事態を重く見た政府は、こうした違法サイトの根絶に向けて、GoogleやYahoo!といったプロバイダー事業者に「サイトブロッキング(違法サイトへの接続を遮断する)」を要請することを発表しました。

他にも、広告業界へは違法サイトに広告を出稿しないことを求めることや、著作権侵害として刑事罰の対象とすることを発表しました。

4月11日 漫画村がGoogleの検索対象から外れる

4月11日、漫画村がGoogleの検索対象から外れていることがわかりました。これは、カナダの出版社ハーレクイン社や日本の出版社ハーパーコリンズ・ジャパン社が3月20日にGoogleに対し行った、デジタルミレニアム著作権法に基づく著作権侵害の申し立てによるものでした。

4月下旬 漫画村、「漫画タウン」に改名

4月11日以降も検索方法によっては、漫画村にアクセスできていましたが、その後接続できなくなっていました。しかし、そんな中現れたのが、「漫画タウン」です。その後、即サーバーが落ちて、アクセスができなくなっていますが、今後もいたちごっこは続くでしょう。

漫画村問題に潜む、さらなる問題

漫画村の運営はボランティアで漫画を掲載しているわけではありません。儲かるからです。

だからこそ、規制されても名前を変えては復活しますし、他にも似たような海賊版サイトが無数に存在します。
彼らが儲かるのはなぜか?その理由の多くは広告収入です。裏側にはさらに多くの問題が潜んでいます。

様々な視点から見た漫画村問題の背景

広告主

漫画村が半年で6億以上のアクセス数を誇ったように、アクセス数の多い場所に多くの広告が流れ込むのは、インターネット広告の仕組みを踏まえると当然です。アクセス数が多ければ、閲覧数とクリック数の多い優良広告枠になり得ます。出向先が違法だとわかっていても、目先の利益に捉われて出稿を続ける広告主は後を絶ちません。

また、今回の漫画村に関しては、大手企業も掲載し、数千万円規模の広告料を支払っていたことが確認されています。しかし、広告主の主張としては、当然違法サイトに出稿しないよう努めているものの、掲載にあたっては複数の広告代理店やメディアレップを挟むことも多く、かつ広告配信がアドテクによって自動化されている中では、実際の配信先をすべて把握するのは難しいという意見もあります。

広告主のリテラシーは当然ながら、代理店に対して業務を丸投げする管理方法や利用するアドテクの吟味など広告出稿のあり方については再考の余地があります。

広告代理店

一方で、広告代理店が勝手に掲載していたと主張する広告主も存在します。広告代理店(あるいはその営業)が自社(自分)の成果・ノルマのために海賊版サイトへ広告を出稿していたということです。この背景には、インターネット広告のビジネスモデルにあり、インプレッション(表示)数やクリック数といった数に対して課金するタイプの広告や、アフィリエイト広告などを代表する成果報酬型の広告は、アクセス数が多いサイトに掲載する事で成果が生まれやすくなります。

これにより、違法と知っておきながら、アクセス数が多い海賊版サイトにバナー広告やディスプレイ広告、アフィリエイト広告を出稿し、インプレッション数やクリック数、成約数を稼いでいたという疑いが求められています。ネット広告代理店には、、今後一層高い透明性が求められています。

参照): ねとらぼ「「漫画村出稿メール」を独自入手 「偽名営業」「取引先は海賊版サイト」元代理店従業員が語る異常な実態

アドテクベンダー

アドテクベンダーが作ったアドネットワークやSSPを通じても、広告が出稿されていたということもわかっています。
つまり、広告代理店はアドテクベンダーが開発した広告配信システムを使って、海賊版サイトへ広告を出稿したということです。

アドテクベンダーもこうした海賊版サイトへの広告配信に利用することは禁じていたものの、全てを把握するのは難しく、契約違反への厳罰化といった動きはあるもの、基本的には利用先の倫理観に任せるしかありません。

参照): ねとらぼ「広告配信のジーニー、「漫画村」など不正サイトへの広告を停止したと発表

アドフラウドの問題

今回の問題においては、同時にアドフラウドも問題になっています。アドフラウドは広告詐欺を意味し、極めて小さな広告を無数に貼ってインプレッション数を稼いだり、プログラムによってインプレッションやクリックを生んだりして、広告収入を得ることです。

今回の漫画村では「裏広告」と呼ばれる手法が仕組まれていました。仕組みは、漫画村にアクセスすると、自動的に別サイトが立ち上がりますが、これは閲覧者にはわかりません。実際に見ていない広告であっても別サイトは閲覧されたとカウントされ、広告収入が発生します。

参照): YOMIURI ONLINE「海賊版サイトの「収入源根絶」、広告規制が対策の切り札

今後について

今後広告業界はこの問題にどのように取り組むべきなのでしょうか。

具体的な対策

配信先のブラックリスト作成

広告主が配信先のブラックリストを作成することで、自社のブランドイメージを守ることも有効です。また、配信先をあらかじめ決めた中で広告配信を行うPMPも増えています。さらには、媒体社が広告枠の販売権を持つ代理店を公開することで、代理店が不正を行うことを防ぐことが可能です。

一方、第三者の動きとして、2018年5月日本インタラクティブ広告協会(JIAA)とコンテンツ海外流通促進機構(CODA)はブラックリストを作成し、著作権侵害の恐れのあるサイトを業界内で共有できる体制づくりを目指しています。

参照): ねとらぼ「「どんな基準で黒とするのか」「責任は誰が」 海賊版サイト広告が停止しなかった理由を広告業界団体に聞いた

アドベリフィケーション

アドベリフィケーションとは、アドネットワークやSSP、DSPなど広告配信システムを通じて配信した広告が、広告主のブランドイメージを下げる場所に出向されていないか、異常なインプレッション数やクリック数を稼いでいないか、そして、ちゃんと広告として認識される状態で出稿されているのか確認することができるツールで、アドフラウドの抑制に威力を発揮します。

欧米ではこのアドベリフィケーションの注目度・技術共に日本よりも進んでいる状況でしたが、日本でもこの漫画村問題によって、注目度が高まっています。各ベンダーもアドベリフィケーションの開発に力を入れています。既存のサービスはもちろん、今後のリリース情報にも注目したいところです。

参照): Super Magazine|SupershipとつながるWebメディア「マーケターとプラットフォーマーから見るアプリマーケティングの今と未来 #Next Marketing Summit2018レポート

ブロッキング

政府が取り組んでいるのが、プロバイダに対するブロッキングの要請です。ブロッキングによって、特定の悪質なサイトへのアクセスを制限することができます。しかし、このブロッキング、一見いいことのように思われますが、憲法上の問題が大きくのしかかります。実はブロッキング自体が憲法に抵触する恐れがあるのです。
憲法第21条には、下記のような記載があります。

第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

つまり、ブロッキングは国民に保障された求める情報への自由なアクセスを制限するので、憲法違反に当たるというのです。しかも、ブロッキングには回避手段も存在し、結局はいたちごっこになると言われており、根本的な解決には至らないというです。

それよりは、漫画村が実際に利用していた海外のデータ配信サービスを止める、ないしは訴えることが解決には近い手段だという考えもあります。

まとめ

この漫画村問題から学ぶべきは、インターネット広告業界において大切なのは、利益だけを追求することのない強い倫理観が必須であることです。問題が起こっても具体的な対策を講じにくい特性上、ビジネスに関わるプレイヤーが人ごとではない自覚を持つべきですし、この漫画村問題によって「知らなかった」では済まなくなりました。今後の政府の具体的な対策と共に、各プレイヤーの対策にも注目したい問題です。

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