第三者配信サーバの登場により、ネット広告は媒体を跨いだ効果測定が可能になりました。ネット広告の効果を測定するうえでは、間接効果と直接効果を理解し、正しく広告を評価することで、費用対効果の良いプランニングを実施するためのPDCAを回すことが重要です。今日は、間接効果の可視化に欠かせない「アトリビューション分析」についてまとめました。
アトリビューション分析とは、広告効果測定の際に、メディア毎にコンバージョン貢献度を調査する分析方法のこと
アトリビューション分析(Attribution analysis)とは、広告効果測定の際に、メディア毎にコンバージョン貢献度を調査する分析方法です。
かみ砕いて説明すると、
広告を評価する際、最後にユーザーが接触した広告だけを評価するのではなく、
間接的にアシストパスを出した広告も評価してあげようという話です。
アドテク普及以前、広告効果測定においては、ユーザーがCVに至るまでのプロセスで
ユーザーに視認、クリックされた広告が何なのかを知る事が出来ずに、
ラストクリックCV(ユーザーが実際にCVした際の広告)しか評価する事が出来ませんでした。
しかし、DSPや第三者配信ツールの登場により、ユーザーに対するトラッキングが可能になり、
アトリビューション分析の概念が広まりました。
アトリビューションのスコアリングにおいて、
ユーザーがクリックした広告までをスコアリングの対象にするのがクリックスルーです。
ユーザーが認知(広告表示)した広告までをスコアリングの対象にするのがビュースルーです。
アトリビューション分析手法の代表例
成果配分モデル
上記のアトリビューションモデルもこの成果配分モデルの考え方の基本です。Google Analyticsの基本的な機能に関しては、この成果配分モデルを元に作られています。
また、他のサービスとしては、アタラ合同会社とFringe81株式会社がアトリビューション分析で連携し、ビュースルーコンバージョンを含めた分析を可能にしています。
ビュースルーコンバージョンとは、表示されたバナー広告をクリックしなかったユーザーが、30日以内に別のルートでコンバージョンした数です。
このサービスは、バナー広告のクリック率の低下に伴い、バナー広告がユーザーに与えている間接的な影響(ビュースルーコンバージョン)の可視化を求めるニーズに応えるものとなっています。
参照): ValuePress!「アタラ、Fringe81が、ビュースルーコンバージョンを対象にしたアトリビューション分析で提携」
ベイジアンネットワークモデル
ベイジアンネットワークモデルとは、株式会社ALBERTが行う、数理モデルと呼ばれるアトリビューション分析モデルです。
ALBERTは、広告における各メディアの因果関係と貢献度をベイジアンネットワークによる因果推論モデルで把握するアトリビューション分析サービスをスタートした。
ベイジアンネットワークとは、コンバージョンに至った原因がどのキャンペーンのどのメディアにあるのかという因果関係と、それぞれがどれだけコンバージョンに影響を与えたかという影響度を、グラフ構造および確率分布から高精度に推論するモデル。
仮説ありきの従来型の成果配分モデルではなく、ベイジアンネットワークを採用することで、より効果の高い広告予算配分を可能としています。
また、これによりデジタルマーケティング領域だけではなく、4大マス広告やリアル店舗での販売促進にも適用できるモデルを開発しており、統合型のアトリビューション分析を可能としています。
参照): MarkeZine「ALBERT、ベイジアンネットワークを用いたアトリビューション分析サービス開始」
マルコフ連鎖モデル
マルコフ連鎖モデルとは、株式会社アイ・エム・ジェイが行う、数理モデルと呼ばれるアトリビューション分析モデルです。
全ユーザーのメディア間の遷移とサイト流入を分析対象に、あるメディアから別メディアへの遷移確率を計算。その確率の大きさ(重み)に従い、各メディアのサイト流入およびコンバージョンの貢献度を算出します。
実際のユーザーの遷移を確率的に表すため、ユーザーの動きが事前のプランニング通りだったかを確認・検証することができます。メディア投資額だけでなく、出稿タイミングも検証し、次期メディア・プランニングに役立てられます。
参照): 株式会社アイ・エム・ジェイ「「アトリビューション分析サービス」開始」
ポルツマンウェイトモデル
ポルツマンウェイトモデルとは、Fringe81株式会社が行う、統合物理モデルと呼ばれるアトリビューション分析モデルです。
オンライン上でユーザーがとる行動が、原子や分子のように確率的に動いている粒子の状態と似通った点が多く、統計物理学の理論で記述可能であることに着目しました。数回にわたるプロトタイプ作成と検討の結果、自然現象をシミュレーションできるボルツマンウェイトを導入することで、「検索連動広告」と「ディスプレイ広告」を縦断して分析/グラフ化した予算配分シミュレーション手法を確立しました。
現状のデジタルマーケティングの現場では、広告媒体ごとにインプレッション(imp)、クリック(CL)、クリックスルーレート(CTR)、コンバージョン(CV)のような指標を少しでもその数字が良くなるよう調整していましたが、実際広告(媒体)間の効果は、サッカーで例えるとパス⇒ドリブル⇒シュートのように連携していながら、シュートのアシストにあたるバナー等は評価されていませんでした。こうした関連性を考慮して、媒体毎に評価するのでは無く、「ゴールが決まりやすい連携をしている媒体、コンテンツ、広告の組み合わせ」を分析し判断できるようになるのが、ボルツマンウェイト分析です。
参照): Fringe81株式会社「Fringe81、統計物理学によるオンライン広告予算の最適配分サービスを開始」
アトリビューション分析の事例
1.新規獲得を昨年比で160%程度伸長させたマッチングアプリ「omiai」のアトリビューション分析施策
マッチングアプリ「omiai」を運営するネットマーケティングFacebook広告に関するアトリビューション分析に関する事例を紹介します。
~背景~
omiaiはFacebook経由で登録するサービスの為、新規顧客の獲得に関してはFacebook広告が重要になります。しかし、昨今のFacebook広告のCPM高騰により、新規獲得が伸び悩んでいました。しかし、Facebookアカウントを持っていないユーザーに広告を配信しても無駄なコストに繋がります。その為、Facebook広告以外の媒体と比較した際に、Facebook広告の優先度が高い事に変わりはなく、施策の頭打ち状態と言える状況でした。
~仮説~
ネットマーケティングのマーケティング担当者は、Facebookの広告配信量のトレンドと、リスティングや自然検索からのユーザー登録数に相関があるかもしれないことに気づきました。すなわち、Facebook広告が間接的に効果を発揮して、他のチャネルからの新規顧客をアシストしている可能性があるという仮説を立てたのです。
~検証~
上記の仮説に対し、ネットマーケティングのマーケティング担当者は、Facebookの協力を得て、ユーザーが登録する際に使用するFacebookIDと、Faceobook広告接触時のFacebookIDを照合しました。そうすると、従来の設定よりも1.46倍の獲得単価を設定して問題ないほどのアシスト力がフェイスブック広告にはあることが判明しました。結果として、従来の設定よりも1.46倍の獲得単価を設定し昨年比で160%程度の新規顧客の獲得に成功しました。
参照):MarkeZine 「少子高齢化も追い風!?Omiai、with、Poiboyら恋の嵐起こすマッチングアプリのグロース戦略」
まとめ
如何でしたでしょうか?第三者配信などの技術進歩に伴い、デジタルマーケティングでは広告の間接効果を可視化できるようになりました。アトリビューション分析は、ネット広告の間接効果を測るうえで非常に重要な施策です。広告施策にお悩みのマーケターの皆さんは、アトリビューション分析の導入を一度検討してみてはいかがでしょうか?
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