Amazonの広告事業は、2016年から日本でサービスを開始し、Amazon Marketing Service(AMS)という広告商品を展開しています。

今年に入って加速度的に事業拡大を進めており、将来的には広告収入額で圧倒的なシェアを誇るGoogleやFacebookの牙城を崩す可能性を持つと言われており、すでにtwitterの広告収入額を上回っています。

今回は、今後さらに注目度が高まるであろうAMSについて、その基本的な概念から今後についてご紹介します。

Amazon Marketing Service(AMS)とは

Amazon Marketing Service(AMS)はAmazon内で出稿できる広告で、出品している商品の売上向上を促進します。Google AdWardsのようなセルフサービス式のクリック課金型広告で、初期費用や月額利用料もかかりません。

1万円の予算からキャンペーンを開始できるので、中小企業や個人の利用も多くなっています。AMSアカウントを持ち、Amazonに出品しているユーザーであれば、誰でも自由に広告を出稿・管理できます。

月間5000万人を超える購買意欲の高いユーザーに対し、精密にターゲティング(キーワードと関連商品のレコメンド)し、簡単に広告キャンペーンを最適化できるサービスです。

配信フォーマット

AMSの広告配信フォーマットは全部で3種類で、検索結果の商品一覧の上に表示される「スポンサープロダクト広告」と、検索結果ページの最上部に表示される「ヘッドライン検索広告」、商品詳細ページに表示される「商品ディスプレイ広告」です。

スポンサープロダクト広告


スポンサープロダクト広告はキーワードターゲティングによって表示されるもので、キーワードは個別での手動設定か自動設定の検索が可能です。

また、検索結果とほとんど見た目の変わらないフォーマットのネイティブ広告であり、検索キーワードとの関連性も高いことから、広告費用対効果(ROAS)が高いことが特徴です。

ヘッドライン検索広告


ヘッドライン検索広告は、スポンサープロダクト広告と同様、キーワードターゲティングによって検索結果ページの最上位に表示される広告です。

商品一覧のフォーマットとは異なり、バナー表示になります。クリックすると専用のランディングページ(LP)に遷移することも特徴です。

商品ディスプレイ広告

商品ディスプレイ広告は、他の二つと違って、キーワードではなく閲覧中の商品や興味・関心によってターゲティングされ、配信されます。

上の図のように、商品詳細ページ等に表示され、クリックするとその商品詳細ページに遷移します。

バナー広告であるため、通常のバナー広告と同様、直接的な購入には結び付きにくく、認知を目的として利用されることも多くなっています。

AMSと同時に知っておきたい『AAP』について

ちなみに、AMSのサービス開始以前からアマゾンの広告事業はスタートしています。それがAAPです。AMSについて更に理解を深めるためにも、ここでAPPをご紹介しておきます。

AAPとは?

AAP(Amazon Advertising Platform)とは、2012年に生まれた、Amazon専用のDSPです。Amazonの閲覧データや購入データに基づいた広告配信が可能で、Amazonサイトをだけではなく、様々なWebサイトやアプリを利用しているユーザーへ広告を表示することができます。

AAPはAMSと違って、主に、広告予算を潤沢に持つ広告主に利用されています。Amazonに出品していてもいなくとも広告出稿が可能で、最近では金融系、メーカー、旅行系などの広告主の活用が目立ちます。

広告の主たる目的は販促とブランディングで活用されることが多く、動画広告も配信可能です。パブリッシャーとの直契約で広告在庫を買い付けているため、現状では効果が高いとされています。このAAPから派生して生まれたのがAMSで、利用対象者が大幅に拡張しました。

なぜ今、AMSが注目されているのか

Google、Facbookのシェアが減少、Amazonは増加


アメリカの調査会社eMarketerの調査予測によると、GoogleとFacebookの米国のインターネット広告の市場シェアが減少し、合計では58.5%あった昨年のシェアが56.8%になると予測しています。一方、Amazonはシェアの約3%を占め、20億ドルを超える収入になると予測されています。

これに比例するようにAMSも大きな伸びを見せており、2017年の第4四半期は対第3四半期で、商品ディスプレイ広告は29%減となっているものの、スポンサープロダクト広告が64%増、ヘッドライン検索広告が75%増となっています。

参照): eMarketer「Data Suggests Surprising Shift: Duopoly Not All-Powerful
参照): eMarketer「Net US Digital Ad Revenues, by Company, 2016-2020 (billions, % change and % of total)
参照): MERKLE「Merkle Releases its Q4 2017 Digital Marketing Report

Amazon広告事業が伸びている理由

Amazonしか入手できないデータを持っている

Amazonの強みは、GoogleやFacebookが入手できないデータを数多く保有している点です。住所やクレジットカード情報などパーソナルな情報はもちろん、商品の検索から購買までの全網羅的な情報を保有しているということです。

これはつまり、Googleはユーザーの知りたい情報を、Facebookはユーザーの個人情報や趣味嗜好を知っていますが、何を買いたがっているかという購買に直結する情報をAmazonに握られています。(GoogleやFacebookはAmazonのデータを入手できません。)

さらに、最近のユーザーは買いたいものは直接Amazonで検索するので、商品の購買活動は一貫してAmazonの完結しています。しかも、Amazonユーザーは今買いたい、購買意欲の高いユーザーです。こうした状況から、オンライン消費を狙った広告を配信する広告主は当然ながら、Amazonの投資対効果(ROAS)は高いと考えるわけです。

投資対効果が見えやすい

前述のようにAMSはROASが良いわけですが、その認知をより高めているのが、管理画面におけるROASの可視化です。

AMSの広告の効果測定は、管理画面上にインプレッション数やクリック数、総売上、商品詳細ページ閲覧数などが表示され、レポートを分析することで、キーワードや入札額を調整可能です。

一般的なインターネット広告と違って、ROASの計測が外注することなく自社内で簡単に確認できることはAMSの大きなメリットです。ROASが見えると、予算投下しやすいという良い循環が生まれており、AMSの躍進を支えています。

今後について

様々な広告チャネルへの派生

すでにAVA(Amazon Video Ads)と呼ばれる動画広告が存在していますが、今後Fire TVやPrime Videoをビデオ広告のプラットフォームとして活用する動きや音声広告事業の立ち上げの可能性など、Amazonの広告事業に関する話題は尽きません。

AMSにおいても、新たな広告配信フォーマットが生まれたり、ターゲティングや配信手法がより最適化されてくでしょう。

リアル店舗との連携

Amazonは、現存するリアル店舗の拡大と、スーパーマーケットチェーンなどのリアル店舗を運営する企業の買収を進めています。

これによって可能になるのが、店舗データとオンライン上の購買データの連携です。連携によりAMSのターゲティング精度やリアル店舗の在庫管理システムの技術が高まる可能性があります。

まとめ

今回は、AMSについてその意味から、今注目される理由、今後の展望についてご紹介しました。

Google、Facebookによって寡占状態だった市場がどう変わるのか目が離せないと同時に、今後Amazonからどんな新しいサービスが生まれるのか注目です。

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