「経営企画」と「事業企画」の違いってご存知ですか?企業ごとによって経営企画部を事業企画部と呼んでいるところもあり、明確にその機能を分類していない企業もあるので、違いがよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
一般に従業員数が100人以上の企業においては、事業の拡大とスピードアップのために2つに部署を分けて置かれることが多いです。今回は二つの業種が分かれている場合の違いについてまとめました。
「経営企画」と「事業企画」の違いについて確認していきます。
経営企画と事業企画の違い
経営と事業とは
経営企画と事業企画の本質的な違いを理解するために、まずは「経営」と「事業」について確認しておきましょう。
経営とは企業や団体が組織として持っている目標を達成するために計画的な事業の管理や遂行をすることです。「会社経営をする」という場合には会社を組織として動かして企業目標に向かって事業を動かすことを意味します。
事業とは営利や生産などの経営目的を達成するために継続的に実施する経済活動を指します。「事業活動を推進する」という場合には企業目標に基づいて定められた事業を具体的な経済活動として進めることです。
経営と事業の関係
経営と事業の意味に基づくと両者には階層構造があることがわかります。経営によって考えられた企業目標を達成するための計画に基づき、個々の事業が策定されます。そして、その事業を個々に具体的な活動として実施し、全体として目標達成を目指すことになります。
つまり、経営の下に複数の事業が存在する形で会社の経済活動が行われています。複数の事業を進める際にはリソースやエフォートの配分を管理し、会社全体として目標を達成できる方向に進める必要があります。その役割を担っているのが経営です。1つの事業に注力している企業では複数の事業の関係性や優先順位を管理する必要がないため、経営と事業を分離させていないことがよくあります。
経営企画と事業企画の違い
経営企画と事業企画は経営における企画を担当するか、事業における企画業務を担うかが違います。会社の経営方針や競合他社との関係性、財務なども考慮して、会社を包括的に動かすため企画をするのが経営企画の仕事です。経営陣とのコミュニケーションも重要になり、経営陣や株主総会などによる意思決定を踏まえた企画をすることになります。
それに対して事業企画では経営企画によって決定された事業に関する詳細な企画を行います。事業推進における課題と解決策の考案や、実施計画の策定、必要業務の遂行のためのリソースの獲得計画の策定などが代表例です。より個々の部署や社員の業務に近い位置で計画を練り、推進を担うのが事業企画の特徴です。
このように経営企画の下に事業企画が位置し、その下に各部署の企画部や企画課が存在する階層構造の組織が作られています。大きな規模の企業になるほどこの階層化が細かくなりますが、小規模な企業の場合には経営企画が事業企画の仕事も担っているのが一般的です。
「経営企画」の職務内容と求められるスキル
職務内容
「経営企画」では、中長期的な視点から成長戦略を練る部署です。会社全体の経営管理、株主総会や経営会議の運営から新規事業の立ち上げなど、会社全体を見据えての業務を行っており、会社の経営層により近い部署でもあります。企業によっては社長室を経営企画部としているところもあります。
具体的な業務内容として、
・経営計画の立案・策定
・予算編成
・事業提携
・M&A推進
・新規事業の企画
などが挙げられます。
求められるスキル
「経営企画」はより経営陣に近しい部署で人気がある一方、会社全体の経営を担っていく部署として、幅広い知識と経験が求められます。
・経営管理力:経営計画やそれに合わせた予算を打ち出す数字能力が必要です。
・企画の立案力:中長期的な視点からの事業企画や新規事業の立ち上げに必要です。
・プレゼンテーション能力:経営会議や株主総会での運営、プレゼン作成を担当するのも経営企画の役割であることが多いです。
・データ分析力:業務をこなす中で情報収集、分析、検討は経営企画では必須となっています。
「事業企画」の職務内容と求められるスキル
職務内容
「事業企画」の部署を設けている場合、より個別的な事業を手掛けるのが事業企画となっています。経営企画は経営層の抽象的、概念的な部分を反映していく一方、事業企画はそれを受けてより具体的な戦略を練り、事業実現のために計画を立てていきます。
具体的な業務として、
・事業計画の推進、策定
・事業課題の設定
・提携、アライアンスの企画
・各部署との連携、マネジメント業務
求められるスキル
事業企画ではより実践的な業務をこなす実行力と、多くの人と関わっていく部署でもあるので、総合的な人間力も必要となります。
・ヒアリング力:経営陣の方針と、様々な部署の意見を取り入れることが求められます。
・マネジメント能力:事業全体にわたって企画、実行までを一貫してマネジメントを行います。事業のリーダー的立場としてチームを牽引していく力が必要です。
・コミュニケーション能力:事業を進めるにあたって、より現場に近い立場から、様々な部署との連携で中枢を担っているのがこの部署です。ヒアリング力と合わせて、円滑な協力関係を気付くことが求められます。
資格
どちらの部署でも必須の資格はありませんが、MBA、公認会計士、中小企業診断士、海外展開をしている会社であればビジネスレベルの英語力などのスキルは業務に役立つ資格といえます。
キャリアパス
資格はあるに越したことはないといっても、経営企画、事業企画への配属は資格、学位よりも、前職での実績や実務経験がより重視されます。では経営企画、事業企画に転職したい場合、どのようなキャリアパスが考えられるのでしょうか。
実際には、役員職やコンサルタント業務の経験、マーケティングの経験を持っていると即戦力として採用されやすい傾向にありますが、前職の経験を問わない場合もあります。
では経営企画、事業企画からのキャリアパスはどういったものがあるのでしょうか。実際に多いのはそのままの職種でより自分にあった企業へと移籍するパターンです。
また、企画能力を生かしたコンサルタント業、経営力を身に着けて管理職へという道もあります。幅広い知識やスキル獲得することが可能なので経営企画、事業企画といった部署での経験は自分のキャリアでも有益なものとなるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?自分はどちらのほうが向いているのか、どちらを目指そうか迷っている方に少しでも違いが分かっていただけたでしょうか。総合的な能力が求められる一方で、どんな業種においても役に立つスキルを身につけることができる職種です。
実際に企業ごとによって事業内容が混合していたりするので、特定の企業について知りたい場合は、企業の採用HP等で事前に情報収集することをお勧めします。