Vol.1ではデジタルマーケティングの歴史について、vol.2ではデジタルマーケティングの現在について、まとめていきました。最終編となる今回は、デジタルマーケティングの今後と将来性についてまとめていきたいと思います。
前回は、2018年現在のデジタルマーケティング業界のトレンドについて理解できました。
[su_list icon=”icon: check” icon_color=”#f46f19″]- デジタルマーケティングにおけるプライバシー問題は今後も引き続き議論を生む
- 個人のストーリーテリングに対する共感は消費行動に変化を生みつつある
- パーソナライズされたマーケティング・サービスが進んでおり、今後も増加していく
- メディアは変化を続けている[/su_list]
これらの現状から、今後のデジタルマーケティング業界について予測していきたいと思います。
デジタルマーケティング業界の今後と将来性について
デジタルマーケティングの今後と将来性を予測するうえでのトピックは下記の通りです。
それぞれまとめていきます。
01:メディアの変化と高度なパーソナルマーケティングの実現
メディアの変化と高度なパーソナルマーケティングの実現は今後のデジタルマーケティング業界に大きな変化をもたらすでしょう。
スマートデバイスによってあらゆるチャネルがインターネットに接続され、メディアになります。
全てがインターネットに接続され、メディアとなる世界においては、フルファネルであらゆるフォーマットに最適化・パーソナライズされた広告コンテンツが必要になります。ともすれば、広告はさらにその形式を拡張していくでしょう。そして、ユーザーが欲求を抱いた瞬間に素早くタッチポイントを作り、ダイレクトに購買まで繋がるものになるはずです。
デバイスの観点で見ると、
今後当面はユーザーとの接触頻度が最も多くなるであろうスマートフォン・スマートスピーカーが「強いユーザー接点チャネル」になります。
モバイル領域でパーソナルマーケティングの技術革新が続いていることは、Googleが2018年に開催したGoogle Marketing Live 2018の発表を見れば理解できます。
[su_youtube url=”https://www.youtube.com/watch?v=MmfaZV96x7A”]引用:Marketing Live 2018: Marketing Innovations Keynote
しかし、注目すべきはスマートスピーカーです。音声認識技術の進歩に伴い、より高度なパーソナルマーケティングが実現するでしょう。
例えば、「お腹がすいた、ピザが食べたい」と声を発するだけで過去の注文履歴から自動でレコメンドされたピザが自宅にデリバリーされたり、「靴下を買いたい」と声を発するだけで、過去の購買履歴から自動でレコメンドされた靴下が自宅に届いたり、といった具合です。
ここまでくると、スマートスピーカー上においては、広告や検索といった既存のモバイルプラットフォームを活用した消費者に対する購買意欲の喚起や、商品・サービスの認知は、意味を成しません。
02:アマゾンが既存のデジタルマーケティング業界をディスラプトする
デジタルマーケティングの今後を語るうえで、最も欠かせない存在はAmazonです。上述したアマゾンのスマートスピーカーは市場シェアトップです。
画像引用:「ロボスタ」2018年Q2のスマートスピーカー全出荷台数は1,170万台 市場シェアはアマゾンがグーグルを一歩リード
直近のところでGoogleが大きくシェアを伸ばしたこと、またGoogle・Amazonが市場参入していない中国勢がシェアを伸ばしたことに起因し、シェアを大きく落としていますが、それでも大きなリードを保っています。「Amazon VS Google」が市場で論を成してから時間が経過していますが、個人的にはAmazonが優位であると捉えています。AmazonとGoogleの大きな違いは、上記のスマートスピーカーシェアにとどまりません。Amazonの強みは、「物流・プライベートブランド」を有する事にあります。
上述しましたが、全てがインターネットに接続され、メディアとなる世界においては、フルファネルであらゆるフォーマットに最適化・パーソナライズされた広告コンテンツが必要になり、ユーザーが欲求を抱いた瞬間に素早くタッチポイントを作り、ダイレクトに購買まで繋がるものになるはずです。
現在はGoogle・Facebookが主に、モバイルプラットフォーム上における検索や広告を通してユーザーの購買意欲を喚起してきました。
しかし、あらゆるデバイスがスマート化する今後のユーザーコミュニケーションにおいては、音声デバイスによる「購買意欲喚起を必要としない購買促進」が予想されます。先ほど例にあげたように、「お腹がすいた、ピザが食べたい」と声を発するだけで過去の注文履歴から自動でレコメンドされたピザが自宅にデリバリーされる時代が到来するのです。
それを可能にするのは、高度な機械学習技術を活用したレコメンド技術・音声認識技術に加え、「物流機能」です。
すなわちAmazonは、広告を必要としない、高度にパーソナライズされたユーザーコミュニケーションを実現できるポテンシャルを有していることになります。
加えてAmazonは、プライベ―トブランドの展開を進めています。
ECのミカタ「Amazon、プライベートブランドを拡充。自宅で何でも揃う時代は目の前に?!」
もはや全てがAmazonで完結する時代がやってくるかもしれません。欲しい物があった時に、一言なにか言えば検索の余地なくレコメンドされたAmazon商品が自宅に届くのです。そこに他ブランドの広告が入り込む余地はありません。
ともすれば、Google・Facebookが牽引してきたデジタルマーケティング業界は、必然的に大きな変化を強いられることになります。
03:良質なコンテンツを提供するパブリッシャーと強力なプラットフォーマーの共存共栄
果たして本当にAmazonの一人勝ちなのでしょうか?市場シェアの観点で見ると、おそらくAmazonが今後も強力な猛威を奮うことになるでしょう。しかし、ありとあらゆるモノが便利になった現代において、誰もが高度化されたパーソナルなコミュニケーションを求めているわけではありません。日本人の消費傾向は、変わりつつあります。
慶應義塾大学 教授 清水聰氏による「2020年の消費者 循環型マーケティングへの転換」によると、今後一層、企業以上に情報を持ち、情報発信を常にしていくような人と、購買の場だけで意思決定していく人が混在し、前者は企業の消費者とのコミュニケーションにおいて重要になると、個人の台頭がより顕著に表れることを示しています。これは、近年叫ばれはじめている「ストーリー型の消費行動」にも近い論理です。
ストーリー型消費行動とは、商品が生まれた背景、裏にある個人の想い、ストーリーを含めた消費体験を求める消費行動のことを指します。
これには、オムニチャネル・パーソナライズ等、あまりにも便利になりすぎた消費行動に対し、より精神的な豊かさを伴う消費行動を求める心理が影響しているのだと捉えています。AmazonやGoogleが主導となって推し進めていく「利便性」とは真逆の方向に、消費欲求を抱く消費者も存在するのです。
ここで大きな価値を提供出来得るのが、消費者にコンテンツを届けるパブリッシャーです。
購買におけるプロセスで広告が不要になろうとも、人が「情報にアクセスしたい」と考える欲求は不滅であると考えます。
形を変える事があったとしても、メディアが消える事はありません。
そこでパブリッシャーが「精神的な豊かさを求める消費者」に対し、有益なコンテンツを届けることが出来れば、「利便性」を追い続ける技術競争の中で戦い続ける必要はありません。
ただし、オンラインの世界において情報にアクセスするためには、プラットフォームが必要です。
パブリッシャーは、常にどのプラットフォームと共存共栄していくべきか、巨大プラットフォーマー各社とにらめっこを続けていかないといけません。
しかし、変化を続ける巨大なプラットフォームと、同じように変化を続けるパブリッシャーの共存共栄こそが、よりよい消費者コミュニケーションを実現させるうえでは必要になっていくでしょう。
04:既存のエージェンシーは、いかにデータを利活用し、ワンストップソリューションを提供できるかが鍵
もはやここまでの話を踏まえると、既存のメディアバイイングやSEO支援を軸にするエージェンシー各社の役割は、いずれ終焉を迎えることが明らかです。
時間軸を踏まえると、まだまだ数年、数十年先の話かもしれません。
しかし現状においても、既存のエージェンシーが事業会社(広告主)より包括的なワンストップソリューションを求められている事は明らかです。
よりパーソナライズされたコミュニケーションを実現するために、各事業会社は、データの利活用に向けて積極的な投資を続けています。デジタルマーケティングは、メディアバイイングやSEOなど、特定領域におけるソリューションだけでは完結しなくなってきているのです。
あらゆるデータを統合的に管理し、フルファネルでパーソナライズされたコミュニケーションを実行しながら、自社にとって強力なファンを形成するための、「共感」を得るコミュニケーション戦略が重要になっています。
エージェンシー各社は、データを中心とした包括的なワンストップソリューションを提供出来る体制を整えると同時に、激しい変化を伴うプラットフォーマーの動向を常に追いかけながら、消費者にとってより良いコミュニケ―ションを提供できる広告コンテンツの開発や、運用を担っていく必要があります。
有力なパブリッシャーとの関係を築いておくことも重要でしょう。
いずれにせよ、あらゆるものがインターネットに接続される世界において、
デジタルマーケティングが今後一層大きな役割を果たしておくことに違いはありません。
総じてデジタルマーケティング業界の将来性は、「不確実で既存の業界構図が塗り替わる可能性は高いが、いずれにせよ有望」として間違いないでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回3編にわたって過去・現在・未来の観点でデジタルマーケティング業界についてまとめていきました。前提として、今回の記事はあくまで編集部の解釈です。参考程度に見てもらえたら嬉しいのですが、どちらにせよデジタルマーケティング業界の変化の早さは感じ取っていただける内容なのではないかと思います。
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