データを起点に個人に最適なマーケティング施策を実施するOnetoOneマーケテイングの重要性が当たり前に叫ばれる昨今において、DMPやMA、CRMといった言葉を耳にする機会も増えました。
デジレカ読者のデジタルマーケターの皆さんであれば、間違いなくその意味や重要性について理解されていることと思います。
これらに加え、急速に普及が拡がったDMPの後を追って新たな概念であるデータ統合プラットフォームCDP(カスタマーデータプラットフォーム)について耳にする機会も増えました。
しかし正直なところ、筆者はデータマネジメントプラットフォームとの違いについてよく理解できていません。
「DMPとCDP、同じようにデータを統合管理するためのプラットフォームなのに、何が違うの?」
この疑問にお答えいただくべく、CDP「INTEGRAL-CORE」の企画・開発・販売を行う株式会社EVERRISE の野口さんに話を聞きにいってきました。
株式会社EVERRISE INTEGRAL-CORE事業部 マーケター 野口 直希氏
そもそもCDPとは何なのか?
インタビュアー)今日は宜しくお願いします。整理しておきたいんですが、そもそもCDPとは何なのでしょうか?
顧客に関するデータを収集・統合・公開するための顧客データ基盤です。
バラバラに管理されている顧客データを一つにまとめるデータハブの様な役割をします。
インタビュアー)そもそもなぜ、CDPが必要とされているんですか?
「マーケティング4.0」と言われますが、「マーケティングによって購買にどう結び付けるか」から、現在は「マーケティングによっていかに長く顧客に使ってもらうか」が求められています。伴い、パーソナライズマーケティングの重要性が叫ばれ、ユーザーのデータ活用のために様々なツールが登場しています。顧客データが増え、やりたいことが増え、様々なツールが登場した現在、逆に顧客データがバラバラになってしまう、といったケースが散見されるようになりました。そのため、各種ツールでサイロ化されたデータをハブとしてつなげる顧客データ基盤、すなわちCDPが求められています。
インタビュアー)データ基盤であるCDPを活用したマーケティング施策の具体例等教えてください。
異なるチャネル毎に管理されていたユーザーデータを統合し、それぞれの事業部で横断的に活用することが出来ます。
例えば、コンシューマー向けのエンタメ系商材を扱う企業があったとします。
商材が同一ブランドにも関わらず、アニメ・イベント・スマホアプリそれぞれのチャネル毎にバラバラでユーザーデータを管理されていることは珍しくありません。
でも本来は、イベントのみに足を運んでいるユーザー/アニメだけを見ているユーザーと比較して、アニメを見たうえでイベントにも足を運んでいるユーザーの方が、ロイヤリティが高いと判断できます。複数のチャネルで横断的にユーザーデータを収集・統合できれば、高いロイヤリティを持つユーザーに対して、適切なコミュニケーション、例えば別ブランドの効果的なレコメンドだったり、スマホアプリユーザーの課金を別チャネル経由で促したり、様々な施策が実現します。このような際に用いられるのが、CDPです。
DMPとの違いとは
インタビュアー)今迄のお話でCDPについての理解は深まりました。一方、いまいちピンとこないのがDMPとの違いです。早速本題になりますが、具体的にCDPとDMPの違いについて教えてください。
DMPは基本的に個人を特定するデータを持っていません。Cookie、デバイス情報、IPアドレスなどの匿名情報を元に構成され、主に広告のターゲティング精度を高めるために利用されるケースが多くあります。
“プライベートDMP”はそこに個人を特定する情報を付加したものです。集めるデータとしてはCDPと限りなく近いですが、前述した広告利用での活用が多く、今後増加する各種個人データの取込みを設計段階で想定をしていません。
CDPは顧客データと言われる氏名、メールアドレス、住所、電話番号など個人を特定するデータを保持し、オンラインやオフラインを問わず顧客の行った行動データをログとして取り込みます。また、収集・統合した顧客データを広告活用だけでは無く、BIツールで分析をしたりMAツールと連携してコミュニケーションを継続的に行うなど、様々なマーケティングツールへデータを受け渡すことが可能です。
インタビュアー)ということは、機能面で見るとプライベートDMPと大きな違いはなく、その「用途」に違いがあるという事でしょうか?
誤解を恐れずに言うと、現状の日本市場ではプライベートDMPとCDPの最も大きな違いは顧客の360度ビューを描き出すか?という点と、リアルタイムに顧客データを処理することができるか?だと思います。
もともとCDPは、顧客に関するあらゆるデータを収集し、時間軸を持った情報として蓄積・処理をして、最終的には顧客像を作り上げて限りなく最新の状況を把握することメインの役割です。日本のプライベートDMPは自社の顧客データを貯めるという出発点は同じですが、データを貯めて分析することがゴールとなっていることが多く、先ほど挙げたようなビジョンはプライベートDMPが世の中に出てきた時には想定していませんでした。また、海外と違いプライベートDMPは広告利用か分析をメインに使われることが多く、最近よく言われるパーソナライズやOMOの様な、個人を深く捉えたりオフラインデータとの統合を考えるとCDPが必要となるのです。
CDPと相性が良い業種や企業について
インタビュアー)だんだんスッキリしてきました!ありがとうございます。CDPと相性が良い業種や企業ってどういう類になるのでしょうか?
横断的に顧客のデータ収集および統合を実現したいという企業様であれば特に向き不向きはありませんが、
強いて言うのであれば、BtoCの企業は相性が良いとされています。
特に、ECと実店舗を持っている様な、顧客とのタッチポイントやチャネルが複数あるケースなどは顧客データ統合の価値やメリットを受けやすいと思います。
また、先ほども例にあげましたが、グループ間や部門間で顧客データが共有されていないケースも良く伺います。これは業種問わず課題として聞く声です。
インタビュアー)EC・小売業者はプライベートDMPの導入も進んでいる印象です。DMPではなく、CDPを選ぶメリットについてもう一段詳しく教えてください。
役割が違うのでどちらかを選ぶという発想では無く、実現したい施策が選択のポイントです。広告の最適化であればDMPやプライベートDMPで対応できるケースもありますし、顧客データの統合をベースにLTVを向上させる様な施策を検討するのであればCDPが必要になると思います。
具体的に言うと、
・CDPを選択した方が良いケース
より多くのデータソースに対応をしているので、今後増えるであろう新しいデータ(IoTや5G)の拡張を視野に入れるのであればCDPが良いと思います。また個人情報保護の観点からも、3rdParyデータの様な他社データよりもきちんと自社で顧客データを管理して運用することが今後は求められます。そういったケースにおいてはCDPが価値を発揮できるかと思います。
・DMPを選択した方が良いケース
広告の最適化に重点を置くケース…外部データを購入して活用するのであればDMPはアクションに強いので、価値を発揮しやすいと思っています。また、オンライン施策に重点を置き、主にセグメント作成に用いる際なども、DMPで事足りるのではと思います。
CDP導入ハードルについて
インタビュアー)データマーケティングを始めたいけど何から手を付ければよいか分からない、そんな中でDMPやCDPのベンダーから言われるがままに導入を勧められて悩んでいる担当者も多い印象です。御社ではそういう、データマーケティングを始めたいけど何から手を付ければよいか分からないといったマーケティング担当者に、どのように話をされていますか?
「とりあえずデータを蓄積する」で終わるのではなく、3ステップに分けて「徐々にリテラシーを高めていきましょう」とお伝えすることが多いです。具体的には、・データを収集する・データを可視化し見る・広告の最適化等のように、分かりやすい施策で取っ掛かりとなるアクションを起こす の順番です。これらがひとまず巡回されてから、次のステップとして、他の施策を試してみる。この繰り返しによって、社内全体で徐々にデータマーケティングに関する知見を蓄積し、リテラシーを高めていくことが重要です。
プロダクトサイドの立場として、やはり導入後の支援も重要になってくることから、カスタマーサクセスの充実にも力を入れるようにしています。
インタビュアー)データ活用に関しては、ITPの問題等を通して各社とも対応が問われる状況にきています。個人情報保護などのセンシティブな課題に対して、CDP開発企業としてどのようにお考えになられていますか?
ITPやGDPRの問題を通して、ユーザーデータをファーストパーティークッキーでとるのか、サードパーティークッキーでとるのかは非常に重要であると考えています。ITPの問題などを踏まえると、やはり今後はファーストパーティ―クッキーで取得する情報がより大事になります。規制が厳しくなるほど、きちんとした顧客管理が求められます。サードパーティークッキーを用いた、ある意味他社に頼るデータ管理ではなく、自社で取り扱う必要があります。だからこそ、CDPの価値は高まっていくのでは、と考えています。
手前味噌になりますが、INTEGRAL-COREにおいては、非営利コンソーシアムのThe IAB Technology Laboratoryに加盟し、IAB Tech Lab提供の共通グローバルIDの仕組み「DigiTrust ID」に対応することが決まりました。
ファーストパーティークッキーで取得する情報が貴重と言っても、ファーストパーティークッキーで取得するデータには限界があります。「DigiTrust ID」は、各社のサイトを訪れるユーザーに対して、それぞれ付与していたバラバラのIDを共通化するものです。同一ユーザーに共通のIDを付与することで、効果的なターゲティング広告配信のためのデータ精度向上を可能にし、今後広がるとされている企業間でのプライバシーに配慮したデータ取引の下地になりうる仕組みです。
プライバシー保護の点でも「DigiTrust ID」をオプトアウトするだけで、対応企業すべてがターゲティング広告配信のためにそのユーザーのデータを使えなくなるので、ユーザー自身がデータ利用の可否をまとめて選択しやすくなるメリットがあります。
このように弊社では、CDPを通してファーストパーティークッキーデータの利用を促進し、プライバシーに配慮しつつ様々なユーザーデータを統合出来るよう対応を行っています。
INTEGRAL-COREについて
インタビュアー)御社製品のINTEGRAL-COREの強みについて教えてください。
大きく二つあります。一つは、国産ピュアCDPであるということ。もう一つは、カスタマイズ性の高さにあります。
外資系ツールと比較した際のユーザビリティにおいて、やはり国産ならではの使いやすさがあると思っています。
他方国内産のプライベートDMPとの比較においては、CDP特有のデータの収集・統合機能面に特化したプロダクト設計のため、アクション系のDMPツールと比較しても、データの収集/統合面においては強みがあると自負しています。
加えてINTEGRAL-COREは、Amazon Redshift™をベースとしており、BIツールなどの多くのツールと連携できます。また、CRMシステムなどの既存業務システムとの接続やカスタマイズが可能です。
まとめると、データの収集・統合機能面に特化した国産ピュアCDPであり、日本人にとって使いやすいユーザービリティ設計になっていることに加え、カスタマイズ性に優れている点がINTEGRAL-COREの強みと言えます。
「INTEGRAL-CORE」に関する資料請求・問い合わせはこちらまで↓
https://www.ever-rise.co.jp/integral-core/
まとめ
如何でしたでしょうか?今日は、CDP「INTEGRAL-CORE」の企画・開発・販売を手掛ける株式会社EVERRISEでマーケターとして活躍する野口さんにお話を伺いました。DMPとCDPの設計思想が異なる点、それゆえに用途が異なる点など、データマーケティングビギナーの筆者でも分かりやすく丁寧にお答えいただきました。野口さん、お忙しい中お時間いただきありがとうございました!
【関連記事】
CDPを選ぶ参考に!CDP3選、比較してみました。
CDPとは-その意味とDMPとの違い、ツール比較まで
国内外のDMP一覧!特徴まとめ