今回のテーマは、『インフィード広告』。
FacebookやTwitterといったSNSや、SmartNewsやグノシーなどのキュレーションメディア、Yahoo!やNewsPicksなどのニュースアプリの隆盛と共に、インフィード広告の市場は拡大しています。
特に、例に挙げたものの多くがアプリ対応しており、スマートフォン利用が多いことから、スマートフォンにおける成長は著しい状況です。そこで本記事では、市場が拡大中のインフィード広告について、その基本的な概念から伸びている理由についてご紹介します。
インフィード広告について
インフィード広告とは?
上の図を見ていただければ、ほとんどの方がその意味をご理解いただけると思いますが、インフィード広告とは先程例に挙げたような画面を上から下に向けてコンテンツを読み進めていくWebサイトやアプリにおいて、そのコンテンツとコンテンツの間に表示される広告のことです。
最近では、テキスト(文字)や静止したバナー広告だけでなく、動画広告が増えたり、バナーそのものが大きくなったりしています。
インフィード広告活用のメリット・デメリット
メリット
インフィード広告は、コンテンツとコンテンツの間に表示される特性上、そのWebサイトやコンテンツに馴染むような体裁をとることが多いです。これによって、「広告」や「プロモーション」という表示はあるものの、ユーザーは広告と意識することなく通常の記事と同じように目を通し、自然と読み進めるので、CTR(クリック率)が上がります。
具体的には、広告のクリエイティブの色合いやフォント、画像、フォーマットなどをコンテンツに合わせます。上記画像(左)がいい例です。
このような「記事の中に自然と溶け込んだ広告」のことをネイティブ広告と言います。※全てのインフィード広告がネイティブ広告というわけではなく、あくまでネイティブ広告の体をなしていることが多いということです。
また、インフィード広告はユーザーに合わせたターゲティングが可能で、よりCTRを高め、CPA(ユーザー獲得単価)を下げることもできます。
デメリット
インフィード広告のデメリットは、そのメリットと表裏一体と言えます。つまり、広告でありながら、ユーザーにとっては通常の記事であるかのように感じさせ、誤認・勘違いして読ませているので、広告と知らず記事のつもりで読んだユーザーは「騙された気分」になってしまいます。
その結果、その広告の商品やサービスに対して悪い印象を持ってしまう恐れがあります。少し古いデータですが、ジャストシステム社の2014年の調査によると、ネイティブ広告をクリックした448人の内、77.3%が騙された気分になると答えています。
また、CTRが高い反面、CPCが高くなってしまう傾向があります。
参照): 株式会社ジャストシステム|Marketing Research Camp「今、話題のネイティブ広告は、「騙された気分になる」」
インフィード広告が流行っている背景
冒頭でインフィード広告の市場はスマートフォンを中心に非常に伸びているという話をしましたが、実際にどれほど伸びているのでしょうか。
サイバーエージェントの調査によると、2017年のインフィード広告市場は昨対比36%増の1,903億円に達し、うちスマートフォン比率は全体の97%で、2023年の市場規模は2017年比210%の3,921億円に達すると予測されています。
なぜ今こんなに市場が伸びているのでしょうか。
参照): 株式会社サイバーエージェント「サイバーエージェント、インフィード広告市場調査を実施」
Yahoo!のUI変更とソーシャルメディアの牽引
元々インフィード広告が流行ったきっかけとなったのは、Facebookです。タイムライン型で表示されるフィード(投稿)の間に、インフィード広告が掲載されるUIです。(上記画像右)Facebookは、この広告掲載方法で非常に大きな収益を上げ、それがインターネット広告業界へ強いインパクトを与えました。
それ以降、多くのWebメディアやアプリがタイムライン型のUIを取り入れるようになりました。
そして、この状況をさらに加速させたのが、2015年のスマートフォン版Yahoo!JAPANとそのスマートフォン用アプリのトップページのタイムライン型へのデザイン変更です。
これによって、提供できる情報量や種類が増えるだけではなく、広告において新たにプレミアムビジョン、インフィード型広告の提供することが可能になりました。これによって、Yahoo!の収益増加と共に、インフィード広告の出稿額が急速に伸びました。
また、Yahoo!のインフィード型広告は「Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)」のターゲティング機能によって、より適したターゲットへの広告配信が可能となっています。
こうしたFacebook、Yahoo!の成功を受け、次々とタイムライン型のソーシャルメディアやキュレーションメディア、ニュースアプリが生まれています。今後もインフィード広告の着実な広がりやインフィード広告フォーマットの導入が進み、市場成長は続くとみられています。
バナーブラインドネス
インフィード広告が注目を浴びる背景に、通常のバナー広告はユーザーにもはや無視されてしまっていて、効果が出にくくなっているという現状があります。こうしたバナー広告への拒否反応から、バナー広告を無意識に無視することを『バナーブラインドネス』と言います。
少し古い情報ですが、2009年アメリカのComScore社の調査によると、84%のユーザーは1ヶ月間一度もバナー広告をクリックしないという結果が出ました。
こうしたことから、より広告感のない、ネイティブ広告の体をなしたインフィード広告が流行ることとなりました。
参照): comScore「“Natural Born Clickers” Study Showing 50 Percent Drop in Number of U.S. Internet Users Who Click on Display Ads」
インフィード広告の目的と相性
インフィード広告の目的
インフィード広告の目的の一番は『ブランディングと認知』です。インフィード広告は、ターゲティングによって何度も表示させるので、ユーザーに飽きさせないことが肝心です。他には商品購入や資料請求、サイトやLPへの流入を狙ったものもあります。
前提として重要なのは、商品を強く打ち出したクリエイティブになっていないか、ネイティブ広告の体にするのであれば、通常の記事と同様、コンテンツとしての中身が伴うかということです。あまりに広告感が強いと前述のように、企業や商品・サービスへのイメージが低下してしまいます。
インフィード広告との相性
上記のように、すぐの購入を目的とした広告ではなく、ユーザーに対して何度も表示させるインフィード広告には、商材によって向き・不向きがあります。
インフィード広告と相性の良い商材
では、どんな商材がインフィード広告との相性がいいのでしょうか。それは、「購入までの検討期間がある程度長いもの」と言えるでしょう。例えば、健康食品や化粧品、旅行、不動産、車といった商材です。
インフィード広告によって、認知させ、商材の良さや魅力を情報量と時間をかけて伝えることで、購買活動につながる単価の高い商材に適しているといえます。前述のように、インフィード広告はCPCが高い傾向にあるので、単価の安い日用品や小売商品はあまり向いていないでしょう。
また、最近ではSaaSと呼ばれる、先に多く(または無料)の課金を必要とせず、利用期間に応じて課金するクラウドサービスもインフィード広告を多く利用している。
まとめ
今後もインフィード広告のWebメディアへの出稿や動画広告の出稿も増え続けるとみられており、市場はますます活況となるでしょう。
しかしながら、Yahoo!の例にもあるように、大手の新しい取り組みや動き、新しいタイプの出稿場所や出稿方法の出現によっても、この市場成長は加速度的に伸びていくでしょう。今後の動向に目が離せません。