プログラマティック広告市場の拡大とともに、トレーディングデスクの市場規模が大きくなっています。今日は、デジタルマーケティング業界におけるトレーディングデスクについて、まとめました。
トレーディングデスクとはデジタル広告の運用を行う代行サービスのこと
トレーディングデスク(TradingDesk)とは、広告を出稿する広告主の代わりに、DSPなどを用いたデジタル広告の運用を行う代行サービスのことです。
「クライアントの広告運用を行う組織やチーム」という認識で相違ありません。
ネット専業広告代理店が保有しているケースが多く、広告主の広告運用、設計、分析等を一貫して請け負います。
トレーディングデスクの存在意義
トレーディングデスクの存在意義は、「クライアント担当者ではカバーしきれない知見やノウハウ、工数をトレーディングデスクが代替することで、広告のパフォーマンスを最大化すること」にあります。デジタルマーケティング業界では、新たな広告媒体や広告商品が増え続け多様化しています。
例えば、様々なプロダクトが市場に溢れるDSP一つとってみても、各DSP毎によって配信面に違いがあるのは当然です。その際に、一担当者がそれを理解し、各媒体毎のユーザー特性を把握し、DSPの運用最適化を図るためには、多大な労力が必要になります。
そもそも、事業会社でこれらのノウハウを蓄積しようとすれば、非常に多くの時間を要することになります。代理店はその点、広告運用における知見を豊富に有しています。
コスト、データの管理と利活用、ノウハウ蓄積の観点でインハウス運用出来るに越したことはありませんが、現実的なリソースを踏まえると困難であるケースが多いことも事実です。
また、ネット広告に投下する予算が大きければ大きいほど、ネット広告における費用対効果を追求すればするほど、広告の入稿や管理において膨大な作業を有する事になります。トレーディングデスクを活用することで、これらの作業工数を緩和することが出来れば、マーケティング担当者にとっては本来の業務である広告効果最大化のためのディレクションに徹する事が出来ます。
トレーディングデスクの市場規模
トレーディングデスクの市場規模を語るうえで、国内トレーディングデスクにおいて、そのニーズの大部分を占めるプログラマティック広告の市場規模を参考にします。
電通グループ3社により発表された「2017年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」によると、
国内全体の「インターネット広告媒体費」は、1兆2,206 億円(前年比117.6%)で、
うちディスプレイ広告で40.9%、リスティング広告で39.6%と全体の約80%を占めています。
取引手法で見ても、運用型広告が占める割合は非常に高く、77.0%にも及びます。
これらの数字を見るにおそらく、インターネット広告の市場規模拡大と併せて、今後もトレーディングデスクの市場規模は拡大していく事が見込まれます。
ただし、プラグラマティック広告市場が現在抱える問題についても検討する必要があります。
プログラマティック広告は、その特性でもある広告の自動取引において、広告配信面の品質コントロールに課題を抱えています。国内では漫画村問題を発端として、業界外も含め、広く問題が露呈されることになりました。また、アップルによるITP2.0による影響も未知数です。
加えて、動画広告の市場拡大に伴い、
・ダイレクト→ブランドへ
・ディスプレイ広告→動画広告へ
といったように、広告主の広告予算比率が一定数シフトしていく可能性も考えられます。
潤沢なデータをもとに最適なマーケティングを実施していくうえで、プログラマティック広告の存在は非常に重要ではあるものの、今後も相当数の障壁が見込まれることから、一概に今後もトレーディングデスクの市場価値が高まる と断定する事は出来ません。
引き続き国内市場においては、各社の動向を注視していく必要があります。
参照)2017年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析
トレーディングデスクサービスを提供する代表的な企業例
株式会社エスワンオーインタラクティブ
エスワンオーインタラクティブは、国内最大級のトレーディングデスクサービスを提供する企業です。商材の幅も広く、リスティング、DSP、SNS広告等は勿論のことながら、DMPを始めとしたCRMツールにおけるオペレーションまで、一気通貫でクライアントの広告パフォーマンス最大化のための支援をおこなえる体制を有しています。
株式会社博報堂DYデジタル
博報堂DYデジタルは、Hakuhodo DY Groupの一員である、博報堂DYメディアパートナーズの100%子会社として、2016年4月に設立されました。博報堂DYメディアパートナーズ内でデジタル広告を扱う「i-メディア局」と、デジタルマーケティング全般を管轄する「株式会社博報堂DYインターソリューションズ」を戦略的に統合した形です。博報堂グループには、その他スパイスボックスやDAC、博報堂アイ・スタジオなどデジタル関連の企業が存在しますが、博報堂DYデジタルは、「博報堂DYグループのデジタル戦略の中核を担う組織」として位置づいています。いうなれば、今後の博報堂のデジタル分野を担う存在です。
まとめ
如何でしたでしょうか?トレーディングデスクは、デジタルマーケティングのインハウス化が進む昨今においても、多くのクライアントに対し以前必要とされているサービスです。プログラマティック広告市場の拡大に伴い、トレーディングデスクサービスを提供する企業は増加していますが、今後の市場規模の拡大については未知数です。プログラマティック広告市場は非常に変化が激しい領域である事から、その動向に注視しておく必要があります。
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