先日セプテーニとの資本業務提携契約の締結および同社株式のTOB実施を発表し、デジタルマーケティング業界を驚かせた国内ナンバーワンの広告代理店「電通」。翌日には、アドネットワーク事業を手掛けるVOYAGE GROUP、CCI、及び電通の資本業務提携も発表されました。
国内デジタルマーケティング領域において積極的な事業展開を進める広告業界の巨人、電通は今後どのような成長戦略を描いているのでしょうか?
同社が2018年に買収した企業、およびM&A戦略を紐解き、考えてみました。
電通が2018年に買収した企業一覧
まずは、電通が2018年に買収したM&A案件、企業についてまとめました。
1月
米国のデジタルマーケティング会社「ハローワールド社」の株式過半を取得
2月
・マーケティング領域のAI開発に強みを持つ「データアーティスト社」を子会社化
・米国のブランドデザイン会社「キャラクター社」の株式100%取得
3月
ポーランド有数の独立系エクスペリエンシャル・マーケティング・エージェンシー 「レッド8グループ」の株式100%取得
4月
・米国のデジタルエージェンシー「M8社」の株式100%取得
・ノルウェーのメディアエージェンシー「レッド社」の株式100%取得
・チリの大手デジタルエージェンシー「ホワイトラベル社」の株式100%取得
6月
イタリアの独立系大手クリエーティブエージェンシー「ビッグナウ社」の株式100%取得
7月
アルゼンチン独立大手デジタルエージェンシー「グローバルマインド社」株式100%取得
8月
オーストラリアの大手マーケティングテクノロジー会社「アミクスデジタル社」の株式100%取得
9月
ロシアの大手メディアエージェンシー「アーロンロイド社」の株式100%取得
10月
・イベントプロデュースに定評のある香港「ブランデッド社」の株式過半取得
・ポルトガルの大手クリエーティブエージェンシー「パートナーズ社」の買収
・英国の市場調査会社大手「B2B社」の株式100%取得で合意
・スイス、ドイツに事業展開する大手総合デジタルエージェンシー「ナミックス社」の株式100%取得
・セプテーニ・ホールディングスとの資本業務提携契約の締結、同社株式に対する公開買付けの開始
・VOYAGE GROUP、サイバー・コミュニケーションズ及び電通の資本業務提携
データアーティスト、セプテーニ、VOYAGE GROUPを除き、全て海外企業の買収となっています。
電通は海外事業で100%デジタルエコノミー対応を目指し、M&Aを加速化させている
海外企業の積極的な買収を続けている同社ですが、海外事業は今、どのような状況なのでしょうか?
実は、電通の連結総売上高のうち、58.8%は海外事業によるものです。
エリア別売上収益の構成バランスを見ると、特定エリアに依存することなく、バランスよく売上収益をあげていることが分かります。
■EMEA(欧州・中東・アフリカ) 約36%
■Americas(米州) 約40%
■APAC(アジア太平洋) 約24%
2013年3月に海外事業の要となるイージスネットワークの買収を完了させてから以後、電通イージスネットワークを海外事業における主要拠点とし、2014年から計117件の買収案件を手掛けています。
国内事業と異なり、企業買収を主たる成長ドライバーとして展開を進める電通の海外事業ですが、2020年までに電通イージスネットワークの売上総利益の構成を100%デジタル関連ビジネスにすることを目標としており、現在既にその比率は58%にまで伸長しています。
電通が海外事業を積極的に展開する理由
日本の広告市場は近年成長傾向ですが、予想される人口減少や経済成長率の低下にともない、近い将来右肩下がりになることが明らかなマーケットです。
経済成長率が低下し景気不調に陥ると、企業が最初にコストカットに取り組むのは広告費です。
一方、海外マーケットはどうでしょうか?若年層の人口増加が見込まれ、成長著しい中東やアジア諸国を中心に大きな経済成長が期待されています。
更に、デジタル領域はグローバルに市場が拡大している領域です。日本国内においても、広告市場の成長を牽引しているのはデジタル広告です。
ともすれば、世界第5位の広告代理店である電通が海外に活路を見出し、デジタル領域へ積極的な投資を実施するのは必然の流れと言えます。
これは、電通に限った話ではなく、国内のアドテクノロジーベンダーやネット広告代理店も、海外市場へ続々と参入しています。
電通の海外事業中長期計画
電通は海外事業において、6つの戦略的優先事項を掲げています。
・顧客のニーズにこたえる統合ソリューションを強化
・メディア、パートナーシップおよびコンテンツがもつ力を最大限に活用
・データおよびピープルベースド・マーケティングでの差別化を促進
・高い成長ポテンシャルを持つ地域やビジネス領域での収益伸長
・業務全体の効率を最大化
・ケイパビリティ向上のため、引き続き市場変化の機会を探索
すなわち、
・電通イージスネットワーク内の各専門ブランドを結びつけ、顧客に対して最適な統合ソリューションを実施していくこと
・そのソリューションの幅を広げるため、メディアとのパートナーシップを強固にし、コンテンツ制作においても新たな挑戦を続けること
・2016年に買収したマークル社のM1プラットフォームを戦略の要としたデータマーケティングの促進
・利益率と成長性の高いセクターに狙いを定めて収益を伸長させる
・業務効率の引き続きの改善
・戦略的なM&Aをはじめとした効率的な資本活用の継続
と言い換えられます。
まとめ
如何でしたでしょうか?今日は、広告業界の巨人「電通」の2018年買収案件と海外事業について、まとめました。同社が海外・デジタルに注力していることが十分にわかる内容でした。電通は国内広告市場を牽引するトップランナーです。電通の動きは、広告業界全体のトレンドを表すと言っても過言ではありません。引き続き要注目です。
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