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ITPの概要とその影響について※2018年9月19日更新

2017年6月にApple社主催の開発者向けカンファレンスWWDCで発表されたIntelligent Tracking Prevention(ITP)。

iOS11以降のSafariに標準装備されたトラッキング防止機能で、これによってインターネット広告業界は非常に大きな影響を受けました。

さらに2018年も同様にWWDCでITP 2.0が発表されました。今回はITPについて、基本的な概念から、広告に対する影響、最新情報までまとめます。

ITPについて

そもそもITPって何?

Intelligent Tracking Prevention(ITP)とは、2017年6月にApple社が宣言した、「自社ブラウザSafari(iOS 11以降)において、3rd Party Cookieを制限し、複数サイトを跨いだトラッキング(クロスサイトトラッキング)を防止する仕様の事で、インターネット広告業界、特にCookieの利用を必要とするサービスを展開するアドテク企業は対応に追われました。

ITPが生まれた背景には、プライバシー保護の観点が挙げられます。3rd Party Cookieを利用した複数媒体を跨ぐトラッキングによって、ある意味ではユーザーが知らぬ間に第三者によって、オンライン上での行動を把握されているといえます。

このような3rd Party Cookieの取り扱いについては世界的な議論の対象となっており、個人情報を大量に保有する企業は、適宜レギュレーションの変更を行っています。

具体的にどのようなものか

広告のクリックやサイトへのログインといったユーザーのインタラクション(人間のシステムへのアクションのこと)からの日数によってCookieの利用を制限するというもので、実は1st Party Cookieも対象となっています。

インタラクションから24時間以下

インタラクションから24時間以内は、3rd Party Cookieのクロストラッキングが可能です。

インタラクションから24時間~30日以内

24時間経過後、3rd Party Cookieは分解され、利用できなくなります。つまり、同じユーザーが同じWebサイトに再訪したとしても、24時間を経過していた場合、別ユーザーとしてカウントされてしまいます。一方、1st Party Cookieは、クロストラッキング用途と分類されたログイン情報などが残ります。

インタラクションから30日以上

インタラクションから30日以上経つと、上記で残っていた1st Party Cookieも含めて、全てのCookie情報が利用できなくなります。

ちなみに、iOS11以降のsafariの設定は、デフォルトで『サイト越えトラッキングを防ぐ』となっているので、このITPはデフォルトで有効になっています。

トラッキングとCookieについて

ITPはCookieの利用を有効期限で制限し、クロスサイトトラッキングを防止するものですから、ITPについて理解するにあたって、トラッキングとCookieは非常に重要な概念です。ITPと一緒に理解しておきましょう。

トラッキングについて

トラッキングとは、Webサイト上でのユーザーの行動を記録、追跡、分析することで、ユーザーのサイトへの流入経路(トラフィック)や閲覧時間、どのページを見てどんな広告をクリックしたのか、商品購入に至った経路などを分析します。

そうした分析によって、Webサイトの最適化や効果的な広告配信を行うことが可能になります。

Cookieについて

Cookieとは、Webブラウザ(safariやchrome、IEなど)に蓄積される来歴情報で、Webサイト側のサーバーがブラウザを通してユーザのコンピュータに一時的にデータを書き込み、保存する仕組みです。トラッキングの分析はこのCookieが元となっています。

Cookieが発行されることで、サイトを閲覧する際に、過去の閲覧履歴を踏まえて最適化されたページを閲覧できたり、ログイン時の手間が省けたりします。

また、DSPなどによる個人に最適化された広告配信は、Cookieデータから個人情報を入手することで可能になっています。
Cookieには2種類あり、一つが1st Party Cookie、もう一つが3rd Party Cookieです。

1st Party Cookie

1st Party Cookieは、ユーザーが訪問しているWebサイトのドメインから直接付与されるCookieで、ユーザーにブロックされにくいのが特徴です。

そのため、精度の高いターゲティングや広告効果測定が可能ですが、サイトを横断してのCookie付与ができません。

3rd Party Cookie

一方、3rd Party Cookieは、ユーザーが訪問しているWebサイトのドメイン以外から付与されるCookieで、サイトを横断したCookie付与ができます。

例えば訪問したWebサイトのディスプレイ広告、記事広告はSSPなどによって配信されており、それらを閲覧すると、訪問しているサイトとは別のサーバーからCookieが付与されます。
3rd Party Cookieにより、1st Party Cookieに比べ、精度は落ちるもの、異なるWebサイト間を跨いだ広告の効果測定や、ターゲティングが可能になっています。しかしながら、知らない間に知らないサーバーからCookieを付与され、行動を把握されているわけなので、プライバシー保護の観点から度々問題となっています。

ITPがインターネット広告業界に与える影響と対策

では、このITPは具体的にどのような影響をインターネット広告業界に与えるのでしょうか。

繰り返しになりますが、ITPはCookieの利用を制限し、クロスサイトトラッキングを防止することでユーザーのプライバシーを守るものなので、サービスの特性上Cookieをよく利用するものは特に影響を受けます。

その最たるものが、リターゲティング広告と効果測定ツールです。具体的にはどのような影響が出るのでしょうか。

具体的な影響について

リターゲティング広告

・リターゲティング広告は、24時間しかユーザーを追えないのでパフォーマンスが低下する。
・リターゲティングリストの質が悪くなり、投資対効果が悪くなる。
・インタラクションがないCookieを利用するリターゲティング広告は、Cookieが使えずユーザーを追従できなくなる。

効果測定ツール

・トラッキングがCookie付与から24時間に限定されるため、計測されるコンバージョン数が減少する。
・同じユーザーが同じWebサイトに再訪したとしても、24時間を経過していた場合、別ユーザーとしてカウントされてしまうので、アトリビューション分析を行う際に、ユーザーの一貫した行動を追えず、それぞれのタッチポイントを正確に評価できなくなる。

具体的な対策について

こうした影響に対して、各企業はどのような対策を講じているのでしょうか。

Google

2017年9月、GoogleはGoogle Adwordsのコンバージョントラッキングの仕組みを変更しました。Google Adwordsのインタラクション(クリック)情報をサイトと連動するGoogle AnalyticsのCookieへ保存することで、クリック情報を保持し、コンバージョンの計測を可能としています。

Yahoo!

ヤフー株式会社は2018年4月23日、Yahoo!タグマネージャーにおけるITPの影響と対応方法を発表しました。対応としては、クッキーを設定するドメインを、1st Partyか3rd Partyか選択できるようになりました。(デフォルトは1st Party。)1st Party Cookieを選択することでブロックされる影響は出にくくなりますが、ドメインに合わせたクッキーのサイズ上限への配慮が必要です。
参照): ヤフー株式会社「Yahoo!タグマネージャーにおけるITPの影響について

Criteo

ITP発表後、Criteo社は具体的な対策を打ち出せず、大きく株価を下げるということがありました。その後、2018年1月25日の事業戦略説明会において、従来のリターゲティング広告に加え、新たなプロダクトの導入を発表しています。
クッキーベースだった従来のターゲティングをよりヒト軸・モノ軸で捉え、ターゲティングの精度を高め、また、CRMやDMPとの連携によって、新規顧客や離脱顧客への正確なターゲティングを行う新商品(「Criteo Audience Match:クリテオ・オーディエンス・マッチ」と「Criteo Customer Acquisition:クリテオ・カスタマー・アクイジション」)を2つ投入するとのことです。前者は今年1月から、後者は今年7月から提供を開始、今後の動向が気になるところです。
参照): CNET Japan「Criteo、2018年は「リターゲティングの会社」から一歩先へ–2つの新製品を投入

Supership

Supership株式会社は2017年9月28日、同社のDSP「ScaleOut DSP」がITP対応を開始したことを発表しています。「ScaleOut DSP」では、ITPの影響を受けない1st Party Cookieによる広告計測に対応し、正しいデータに基づく広告の配信・効果計測が可能となっています。
参照): Supership株式会社「Supershipの「ScaleOut DSP」、 最新Safariブラウザのトラッキング防止機能(ITP)に対応

ロックオン

株式会社ロックオンは2017年11月1日、自社が提供するマーケティングプラットフォーム「アドエビス(AD EBiS)」が同年11月13日からITP対応を行うことを発表しています。

■クロスドメイン計測でもクライアント様の負担を強いることなく対応
一般的な対策案でも本件への対応は可能でしたが、その場合、たとえば非常に多く見られる「応募フォームのURLが別のドメインに存在するケース」などにおきまして、効果測定を希望するページとは別に「誘導元のボタンなどに都度、追加の設定が必要」となっております。
この場合、クライアント企業様に多くの工数を強いてしまう側面があり、一部のクライアント様にとっては、現実的ではない解決策となっておりました。 アドエビスでは、この問題を含めて本件に対応し、従来通り「計測タグを計測対象ページ側に設置するのみ」で、引き続き正常な計測ができるよう対応いたしております。これにより、クライアント企業様の利便性を損なわず、かつITP の影響を受けない、計測が実現いたします。

参照): 株式会社ロックオン「マーケティングプラットフォーム「アドエビス」におけるITP(Intelligent Tracking Prevention)への対応について

A8.net

「A8.net」を運営する株式会社ファンコミュニケーションズは2017年10月27日に1st Party CookieによるITPの影響を受けないトラッキングに対応を終えています。さらに、2018年3月28日広告主企業向けに、ITPに対応した新しい広告効果計測システムの提供を開始しました。

新システムでは、広告主はDNS(Domain Name Systemの略で、インターネット上でドメイン名を管理・運用するためのシステム。)の設定をするだけで、同一ブラウザ上でのあらゆるユーザーの遷移ケースを「1stパーティ製Cookie」で正確に効果計測することが可能になります。

なお、当技術は特許出願中とのことです。
参照): 株式会社ファンコミュニケーションズ「A8.netが新広告効果計測システムの提供開始(特許出願中)、1stパーティ製Cookieを採用し、DNS設定のみで従来の計測が可能に

Apple社の最新動向と今後の動き

当のApple社は昨年同様、2018年6月4日開発者向けカンファレンスWWDCにて、「Intelligent Tracking Prevention(ITP) 2.0」と呼ばれる新たな変更を発表しました。

ITP2.0における主な変更点について

今回の変更もアドテク業界にとって非常にハードルの多いものとなりそうで、2018年9月配信予定の次期iOS12から装備される予定です。よりプライバシー保護を重視した変更になっています。

クロスサイトトラッキングの24時間猶予を排除

昨年のITPでは3rd Party Cookieを利用したクロスサイトトラッキングが24時間は許されていましたが、追跡機能を持つと判断されたドメインのクッキーは直ちに分解し、デバイスの追跡技術を徹底排除します。

パスワードの安全性強化

安全強度の高いパスワードの自動生成やユーザーの同一パスワードの使い回しを避けさせる機能が追加されました。

Cookieによる追跡をブロック

FirefoxやChromeのトラッキング防止機能のように、ITP 2.0ではWebサイトがユーザーのCookieを取得する際、警告が表示され、ユーザーはWebサイトのCookie取得を許可するか選択できます。

これまでGoogleやFacebookを毎日使うユーザーは、追跡機能が永続的に維持され、トラフィックはITPの影響を受けませんでした。しかし、今回のITP 2.0においては、GoogleやFacebookの追跡機能でさえも、ポップアップの警告文と共に追跡がブロックされてしまいます。

ITP2.0実装に伴う各社の影響と対応についての最新情報※2018年9月19日更新

Apple社は日本時間9月18日、「iOS12」の配信を開始しました。最新OSである「iOS12」には、上述したITP2.0が実装されています。すなわち、追跡機能を持つと判断されたドメインのクッキーは直ちに分解される=safariブラウザ上におけるターゲティング広告配信やCV計測が不可能になります。

これに対する各社の対応は下記の通りとなっています。
※現段階でアップデートがあった企業のみ抜粋しています。

広告効果測定ツール提供の大手二社では、いずれもリダイレクト方式による計測を廃止する意向

株式会社ロックオン「アドエビス」

広告効果計測ツール「アドエビス」の開発・販売を行うロックオンは、ITP2.0の影響について、2018年9月3日時点で、下記の通り影響と対応を発表しています。

1. リダイレクトプログラム(以下:リダイレクトPG)を利用している場合の影響
※[設定>システム設定]画面の[リダイレクトプログラム関連]を設定している場合が該当。
※通常のリダイレクト計測URLを利用している場合は、対象外。

アドエビスでの計測および、お客様サイトのCookie情報を用いる処理(お客様サイトのログイン情報の保存など)ができない可能性があります。
リダイレクトプログラム利用時、お客様サイトのドメイン(リダイレクトプログラムを設置しているサイトのドメイン)がトラッカー判定されるためです。

リダイレクトプログラムの利用を停止し、計測方式をダイレクト計測へご変更ください。

2. 新タグ(共通タグ)を利用していない場合
※新タグとは、2017年11月15日よりアドエビスが提供しているタグ。

旧タグで計測されている場合、 ITPの影響を受けコンバージョンやPVが正しく計測できなくなります。
また、リファラがドメインまでしか取得できなくなることにより、正しくクリックやコンバージョンが計測されない可能性があります。

旧タグの利用を停止し、新タグへご変更ください。

参照):株式会社ロックオン「【重要】ITP2.0がアドエビスへ与える影響と対応に関して(※2018/9/3 更新)」

株式会社ビービット「WebAntenna」

広告効果計測ツール「WebAntenna」の開発・販売をおこなうビービットは、昨年時点でリダイレクト方式での計測の廃止を発表していますが、2018年8月時点で改めて完全廃止の発表をおこなっています。

ウェブアンテナでは2019年1月31日(木)をもって、リダイレクト方式による計測を廃止いたします。

計測が行われなくなるだけではなく、リダイレクト処理そのものも停止されるため、上記期日までにダイレクト方式への設定変更ならびに入稿URLの差し替えをお願い申し上げます。

参照):株式会社ビービット「リダイレクト方式廃止のご連絡とダイレクト方式への設定変更のお願い」

ASP各社も対応を進めている

株式会社ファンコミュニケーションズ「A8.net」

A8.netを提供するファンコミュニケーションズにおいては、2018年9月18日時点で対応状況を発表しています。2017年より導入を進めてきたITP対応の計測ツールで問題なく計測出来ていることを確認しているとの事です。

ITP対応済みの成果計測ツール・手法にて、本バージョンについても現時点で問題なく計測できております事をご報告致します。

同計測ツールにおいては、昨年より各広告主様にて適用を行っておりますが、適用が完了している広告については「ITP対応済みアイコン 」にてご確認頂けますので、該当広告に関してはこちらをご参照頂ければと思います。

参照):株式会社ファンコミュニケーションズ「A8.netのITP2.0対応状況に関しまして」

バリューコマースやインタースペースなども2017年時点でCookieに依存しないトラッキングが可能な効果計測に対応したことを発表しています。各ASPとも、広告主と連携し、ITP対応広告の導入を進めています。

DSPベンダー各社では、特にアップデートの報告は見られず

編集部の確認範囲では、2017年秋の各社による対応発表以降、今回の実装に伴い改めてITPへの対応をアップデートしている企業はありませんでした。

ITP2.0実装以後のデジタルマーケティング業界への影響

今回のITP2.0により、safariブラウザに対するリターゲティング広告配信は出来なくなります。ただ、以前よりsafariブラウザではデフォルトで3rd Party Cookieの利用はブロックされていました。そのため、各DSPにおいて、safariブラウザにおける広告配信ボリュームはITP実装以前と以後でDSPベンダーの死活問題にかかわるほどの減少は見られないでしょう。ただし、アドフラウド問題等一連のプログラマティック広告が抱える問題の顕在化などに伴い、一層「特定のユーザー層を多く抱える一部のプレミア媒体に対する需要増加」が起こり得ます。すなわち、オーディンスターゲティングによる「人に対するターゲティング」から、「枠に対する広告出稿」へと、再び市場変化が起こるのではないかと考えています。

まとめ

2017年のApple社のITPは、国内外問わず大きな影響を与えました。各社様々な迂回策を講じてきましたが、今回のITP 2.0を見る限りApple社の徹底抗戦は当分続きそうです。

しかしながら、市場全体の流れとしても、今年EUでGDPRが施行されたように、個人データやプライバシーを保護していく方向性は強まるでしょう。

また、アドテク企業もCookieを利用しないブロックチェー技術などを活用した新たなアトリビューション分析手法を生み出しており、一方でCookie離れも今後進みそうです。2018年もITP 2.0への各社の対応に注目です。

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